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Melodies of Life(前篇)

こんばんは。
また大変遅くなってしまってすいません…。
今年の3月にパワポケスタジアムさんで開催されました、
タワシさん主催の捏造裏サクセス企画『空族時代篇』
の世界を舞台にしました、五年生夫婦のお話です。
五月に掲載しました【子守唄】の続きのお話となっています。
今回は前編。お話は後編に続きます。
後編は、また来週に。

タワシさん、wayaさん、F・Sさん、
アイスさん、文一郎さん、BLUEさん、tareさん、
キャラとキャラの名前、設定とストーリーをお借りしました。

それでは、以下よりSS本文となります。



【Melodies of Life(前篇)】



少女は、泣いていた。
少女の前には、彼女の前から消えていく三人の大人の姿があった。
二人の女性と、一人の男性。
何れも、少女にとって、とても大切な人で、愛していた人、だった―。
―行かないで!―
涙に濡れた少女の声。
少女は気丈だった。
どんなに辛い事があっても、人前では涙を見せまいとする、そんな子だった。
彼女の前の三人は、その少女の涙を知る、数少ない人物だった。
けれど、三人の男女は、そこに足を留める事はできなかった。
行かなくては、いけなかったのだ。
もう、彼ら三人は、少女とは住む世界が異なってしまったから。
理不尽な運命によって、少女と引き離されてしまったために。
ずっと、一緒だったのに――。

――あなたは、幸せになって――

やがて、三人の姿は霧散し、完全に少女の前から消えて無くなってしまった。
泣き崩れる少女。
少女の意識が絶望に沈み、
目の前の世界から色が、音が、あたたかさが失われていこうとした時。

どこからともなく、その声は聴こえてきた。
それは、歌声だった。
あたたかさと、優しさに満ち溢れた歌声。
それは、絶望に沈もうとした少女の心を踏み留める。
―あたたかい―
心が、優しいぬくもりに抱かれる。
いや、心だけではない。
その身体も、ぬくもりに抱き締められていた。
ぬくもりに抱き締められると共に、
彼女は自分の中に、新たなるぬくもりが生まれるのを感じた。
自分を抱き締めるぬくもりと、自分の中に新たに生まれたぬくもり。
ぬくもりが、彼女の心から一瞬消えかかった想いを蘇らせる。
それは、幸せの想い。

少女は、もう不幸ではなかった。
想いが蘇ると共に、少女の意識は、この世界から、彼女があるべき世界へと目覚める。





「ん…」
ぼんやりと意識を覚醒させたマリンが最初に目にしたのは、
カーテンの隙間から室内に差し込む、柔らかい月の灯りだった。
先程の「夢」の中と同じように、彼女の身体は、優しいぬくもりに抱かれていた。
少し首を捩ると、目が合った。
彼女の身体を優しく抱き締める、夫の目と。
「…目、覚めたのか。」
「…うん。」
頬をそっと指でなぞる。
あたたかく濡れた感触。
「…ありがとう。」
彼女が辛く悲しい夢に苛まれた時、いつも夫はこうして優しく抱き締めて、彼女を救ってくれる。
「…ごめんな、また泣いてしまって…」
「気にするな。泣きたい時は、声を出して思い切り泣けばいいんだ。」
夫はそう言って、枕元のハンカチを手に取り、マリンの濡れた頬を優しく拭う。
「泣いてばかりじゃ、この子にも心配させちゃうよ。」
マリンはお腹を優しく撫でる。
大きくなったお腹。
そこには、新しい命が宿っている。
夫と育んだ、愛の結晶。
肉親を全て亡くした過去を持つ彼女に、
もうすぐ、自分の血を分けた、新しい家族が生まれる。
「ごめんな、お母さん、泣いちゃって…。」
「大丈夫だぞ。
 お前のお母さんは、たまに泣いちゃう事もあるけど、強いお母さんだからな。」
夫は左手を、お腹に手を添えるマリンの左手にそっと重ねると、
一緒に、お腹を優しく撫でた。
右手は、そのまま彼女のお腹に優しく触れる。
「お前の事も、お母さんの事も、俺がちゃんと守るから…
 だから、安心して生まれて来いよ…。」
「お母さんも、絶対にお前の事を守ってやるからな。
 元気に、生まれてきてくれよ。」
マリンのお腹の中の新しい命に囁きかけると、
二人はお互いの顔を見合わせ合い、優しく微笑み合う。
「…寝るか。明日、早いしな。」
「そうだな。……なぁ、一つ、お願いしていいか?」
「ん?」
「もう少し…このままでいてくれないかな。」
返事の代わりに、夫はマリンの頬にそっと口付けると、
彼女の身体を優しく抱き締めたまま、静かに歌を口ずさみ始める。
マリンから教わった、子守歌だった。





「おはよう、パーシヴァル。」
「起きたか、パーシヴァル。」
「うん、おはよう。」
「お義父さん、お義母さん、おはようございます。」
「マリンちゃんもおはよう!」
「おはよう、マリン君。」
翌朝、目覚めたパーシヴァルとマリンがリビングに向かうと、
パーシヴァルの両親は既に起床して着替えていた。
「マリン君、その子は今日には生まれてきてくれるかな?」
「それはまだわかりませんよ。元気に生まれてきてくれるのを願うばかりですよ。」
「そうね。私もそれを願うばかりだわ。」
そのやり取りは、
マリンが臨月を迎えてから、毎朝必ず交わされるようになった。
パーシヴァルの両親もまた、初孫の誕生の日を、
今か今か、と常々楽しみにしている。
「もう朝ご飯にする?」
「そうだな、お願いしようかな。」
「よし、母さん、朝食の準備だ。」
「あ、お義母さん、俺も手伝いますよ。」
「ダメダメ。マリンちゃんはもう臨月に入ってるんだから。
 ずっと前から言ってるでしょ。
 無理したら、お腹の赤ちゃんに良くないわ。
 私とパーシヴァルに任せて、マリンちゃんは休んでて。」
「…すいません、いつも気を遣わせちゃって…。」
「何言ってるの。あなたとお腹の赤ちゃんのためだもの。
 ほらほら、パーシヴァル、手伝って。」
「はいはい、今日も野菜洗いからでいいかな?」
「うん、お願い。」
「頑張れよー、二人とも。」
「…親父もたまには手伝えよ…。」

今日も、一家の新しい一日が始まる。





「本当に、いつ生まれてくるんだろうな?」
「もうすぐ、なのは確かだと思うけどな。
 臨月に入って、兆候も度々起こっているし…。」
朝食終えて一息休息したところで、
夫婦は車を出して、町の港に来ていた。
待ち人を、待つためだった。

田舎町であるパライソだが、
その美しい町の情景と周囲に広がる自然風景に惹かれて、
町を訪れる観光客の数は少なくない。
陸路を伝って来る者もいれば、海路、更には空路を使って町に来る者もいる。
数十メートルクラスの船舶も停泊可能な港を備え、
近隣に小規模ではあるが必要なものの備わった飛行場も所在する港地域は、
パライソの玄関口であり、最も賑わっている地域だ。

「そういえば…昨日の夜も、悪かったな。また助けてもらって。」
「そう何度も謝らなくていいんだぞ。夫婦だろ。」
待ち人を待つ二人は、港付近にある公園のベンチに腰かけて、
時折空を眺めつつ、静かな時間を過ごしていた。
「妊娠中に悲しみやすくなったり、涙が出やすくなるのは、
 妊婦さんにはよくある事だろ。
俺のお袋だって、俺がお腹の中にいた時はそうなったって言っていただろ。」
「うん…。」
所謂、マタニティブルー。
女性が妊娠中、出産後に、一時的に感情や精神状態が不安定になってしまう症状。
「赤ちゃんがもうすぐ生まれてくると思うと、
すごく楽しみで、嬉しくて、幸せだと思うのに…、
不安まで、一緒に大きくなってしまうんだ。
こんなに、幸せな事なのに、な…。」
「不安が大きくなるのは、俺も同じだよ。
 昨日の夜もああ言いはしたけど、それでも、
 俺なんかがいい父親になる事ができるのかって度々不安に思う。」
「なれるさ、お前なら。」
「そういうお前だって、絶対立派なお母さんになれると思うぞ。」
「昔から、ずっとそう言ってくれてるよな、お前。」
「そう信じているから、そう言ってるんだ。」
「そうか…。俺もそうだぞ。
俺だってお前がそうなれると信じているから、率直に言ってるんだが。」
そう。お互い、信じる事は同じだった。
「…ありがとうな。」
「…お前もな。」
少し照れて、お互いの頬が熱くなる。

(わかってるよ。お前が不安に思っている事…。)
そう、パーシヴァルわかっていた。
マリンが不安に思っている事。
それは、「親になる事」への不安だけじゃない。
今ある幸福を失う事への、恐怖。
過去に経験した、いくつもの辛く、悲しい出来事。
それは、一生消えないであろうトラウマを彼女の心に深く刻みつけ、
今もなお、彼女を苦しめている。
だからこそ、自分が守らなくちゃいけない。
彼女の夫として、
生まれてくる子供の父親として、
家族を愛する者として、
一人の男として、
彼女と、生まれてくる子供を…家族の幸せを守らなくてはならない。
誰よりも愛している人を、守りたい。絶対に。
それは、パーシヴァルが心に決めた、一生をかけて守り抜いていく、誓い。

「…!…なあ、聞こえて、こないか…?」
その声に、マリンは耳を澄ませ、意識を聴覚へと集中させる。
「…!うん、聞こえる。この音、間違いない。」
二人は共に、空を見上げた。
彼等は確かに聞いた。懐かしい音…声を。
その声は、東の空から近付いてくる。
空に、鯨が浮かんでいた。
鉄で出来た身体を持つ、「空飛ぶ鯨」は、ゆっくりとパライソの町へと近付いてくる。
「…来た…!」
その雄々しき姿を、パーシヴァルとマリンは、嬉しそうな表情を浮かべつつ見上げていた。

ファッティホエール号。
空族の存在がすでに過去の物と化し、大きく時代が変わりゆく現在も、
空族達が空を飛び廻っていた時代から飛び続けていた「鋼の鯨」の生きる場は、
今も大空にあった。
歴史の裏で、この世界の存亡を賭けた「謳われぬ戦争」を戦い抜いた、
「謳われぬ英雄」達の母艦。
その戦いを知る人間達は、今もその雄姿に、その名に対して敬意を払う事を忘れない。
そして、鋼の方舟と共に戦い続けた勇士達に対しても。
現在も、パライソの町の人々にとって、
ファッティホエール号は馴染み深い存在だった。
パーシヴァルやマリン、
町の郊外に研究所を構える科学者、プロフェッサー・クロノと、
その助手のジョンがファッティホエール号に乗り込み、
戦っていた事も、町の住人達は知っていた。
今もファッティホエール号には、彼等の仲間達が乗っていることも。
また、パライソ郊外に別荘を構えるイオ・レーヴェ…レーヴェ財閥現会長が、
現在もファッティホエール号の面々と…
ファッティホエール号を所有するアブニール社と協力関係にある事も、
町の人々にとっては周知の事実だった。

港の係員に通信を入れ、無事に港に着水したファッティホエール号は接岸。
パーシヴァルとマリンもまた、接岸したファッティホエール号の傍に辿り着く。
やがて、格納庫の扉が開き、中から一人の男が姿を覗かせた。
「よおっ! はるばるお疲れ様!」
その男を、パーシヴァルは手を挙げて、笑顔で歓迎する。
「久しぶり!」
艦内から姿を覗かせた男も、パーシヴァルとその隣に居るマリンの姿に気付くと、
手を挙げて合図を示し合せる。
クロエ・ユウ。
ファッティホエール号の艦長であり、
「謳われぬ戦争」にて、カメダ軍団を打倒した勇者達の中心となった男である。





「それでは、俺達の再会を祝して、乾杯!」
「「「「「「乾杯!」」」」」」
パーシヴァル、マリン夫妻とパーシヴァルの両親の邸宅にて、
息子夫妻を交えた七人の男女が、笑顔と共に杯を交わしていた。
(とはいっても、お酒ではなくお茶やジュースだが)
「遠路はるばる、本当にお疲れ様。」
「五人とも、元気そうで何よりだよ。会社も銀行も、順調みたいでさ。」
「うん! みんなの…たくさんの人達のおかげさまでね。」
元気印の笑顔で答えたのはユイ。
父・トウヒの跡を継ぎ、アブニール社の若女社長となった彼女は、
家電企業へと転身させた会社の事業を順調に進めている。
「こっちもね。テネジーにも、本当に色々と助けてもらってるよ。
 たくさんの人達に助けてもらっているけど、
 やっぱり、テネジーに一番助けてもらってると思うし、
 テネジーの助けが一番嬉しいよ。
 最高の妻をもらえて、本当、僕は果報者だよ。」
「旦那様を献身的に補佐するのは、奥さんである私の務めですから。
 …でも、嬉しいなぁ…。
 果報者なのは、私も同じですよ。
先生に、いつもいつも、いっぱいいっぱい愛してもらってますから(はぁと)
昨日だって、明け方近くまで…」
「ぶっ! ストップ! テネジー、悪いけどそれ以上は…」
隣に座る妻の続けそうな言葉を察知したところで赤面して噴き出したアケチは、
急いで続こうとした妻の口を制止する。
「…ぁ…ご、ごめんなさい、先生…。」
夫に制止されて、妻は一層照れ隠しの笑みを浮かべた。
ユイがそうしたように、アケチも現在は父親の仕事を継ぎ、
銀行の若頭取という立場にある。
学者としての活動も続けているが、
現在は世界情勢の関係上や、頭取の地位を継いでさほど時間が経っていない事もあり、
学者としての活動は休業中の様子。
そして、彼の妻のテネジー。
元は国際テロリスト・カメダ軍団の一員であり、
パラダイス・カフェの従業員でもあった彼女は、
あの戦いの中で相思相愛の仲となったアケチと結ばれ、
現在は彼の妻として、若頭取の仕事を献身的に補佐している。
「お互い…いい奥さんをもらったな、アケチ!
 マリンだって、俺の嫁だって、最高の嫁だぞ。世界一だ!」
「お、お前…! そこまで…」
親友に負けじ放たれたパーシヴァルの熱い言葉に、
マリンも瞬時に表情を赤くしてしまう。
恥ずかしいけど、嬉しくて。
「全く…だね…。」
親友の言葉に、静かにも、はっきりと、照れた表情を浮かべつつ、アケチも応える。
テネジーも、満面の幸せな笑みを浮かべていた。
「…ご馳走様だな、ホント…」
そんな幸せな二組の夫婦を、嬉しそうに、同時に、羨ましそうにも見つめる、
ユウ、ユイ、そして…。
「ところでアケチ、お前、前に会った時よりまた痩せたな。」
「…察してくれないかな…。…そういう事なんだよ…。」

「…そうか、二人もそういう事情で忙しいんだな…。」
「ああ。先の大戦は終わったとはいえ、終戦の混乱はまだ各地で続いているからな。
 紛争の火はまだいくつも燻っている。」
「だから、今の僕達の主な任務は、火消しをする事なんだ。
 火が大きく燃え上がる前に、出来るだけ早く、すぐに消化できるようにね。
 …あんな戦争みたいな悲しい事は、もう起こしてはいけないんだ。」
「空族の時代が終わっても、空族にも火消しの一助は出来る。
 …戦うさ。俺達にもその力があるなら、これからも、そのために…。」
「僕達が生きていくこの世界を、
みんなの…この世界で生きる人達の幸せを守るためにも…。」
「何か力になれる事があったら、また俺達も、手を貸すからな。
 負けるなよ、二人とも…。」
「負けないさ、俺達、二人なら。なぁ、ヒカル。」
「うん。ユウと一緒なら…!」
夫婦の言葉に、強く頷くユウ、そしてヒカル。
かつて「謳われぬ戦争」を戦い抜いた「謳われぬ英雄」達の中核だった少年と、
文字通り、世界の命運…「鍵を握る者」だった少女。
空族の時代が終焉を告げ、世界中が戦場になった大戦が終わり、
時代が大きく転換していく中、二人の戦場は、今も変わらず大空にあった。
二人だけではない。
今も、かつてファッティホエール号に集っていた仲間達の中には、
大空で戦い続けている者は何人もいた。


ユウ達がパライソの町を訪れたのは、
アブニール社とパライソの町にある家電企業(ミソラの働いている修理工場が発展した企業)
との契約と協力のためでもあった。
今から遡る事二日前、
ブランシェで終戦後初めて世界各国の電気工学者達が集まっての会議が開かれ、
ファッティホエール号の仲間の一人で、
現在は高名な電気工学者として名を馳せ、アブニール社の重役でもあるレンも
会議に出席、参加する事になり。
それに彼女に同行する形で同じく仲間のアカリもブランシェの街に滞在する事になった。
会議の期間は一週間。
その会議期間中の日時に、ユイ達もパライソに向かう事になり、
現在ちょうど休暇をとったユウ、ヒカル、そしてアケチ夫婦も伴って、
五人はパライソの町を訪れたのだった。
用事となる契約の打ち合わせの日時は翌日。
この日は、ユウ達はパーシヴァル・マリン夫妻をはじめ、
パライソの町に住むかつての仲間や友人達の許を訪れ、旧交を温める予定だ。


「あ、今のうちに二人に渡しておかなくちゃ…。はいこれ。私達やみんなから。」
「サンキューな。」
ユイ達が用意していたいくつもの品を、身重の妻に代わってパーシヴァルが受け取る。
「…こんなにも、たくさん…」
手渡されたいくつものプレゼントに、マリンは喜びに溢れた声を漏らす。
「このベビーウェアはね、私とヒカル君が編んだの。」
「…どう、かな…?」
マリンは彼女達の編んだ二着のベビーウェアを手に取ると、まじまじと見つめ、眺めた。
「かわいい…。それに、なんだか懐かしくて、不思議な感じがする…。」
「そのベビーウェアはどっちもね、
私とヒカル君が赤ちゃんの頃に着ていたものを参考にして編んだの。」
「ベビーウェアを編むのは初めてだったんだけど…どう、かな…?」
ユイに続いて、照れ臭そうに言葉を紡ぐヒカル。
少女の頃の面影が強く残る表情だった。

二人がまだ赤ちゃんの頃に着ていたベビーウェア。
それもどちらも、彼女達の母の手編みのものだった。
牧歌的なかわいらしさの、ユイのベビーウェア。
神秘的なかわいらしさの、ヒカルのベビーウェア。
どちらも、二人の優しさがつまった素敵なプレゼントである事に変わりは無い。

「ありがとうな、二人とも。二着とも、生まれてくる子に大切に着させてもらうよ。」
二人の「母」の娘への愛情がつまったベビーウェアは、
今度は、彼女達の大切な友人に…
もうすぐ「母」になる女性に、生まれてくる新しい命に、受け継がれて…
二つの愛情が、また新たに未来へと繋がる。

その他にも、たくさんの素敵な贈り物が、夫婦に贈られた。
今日二人の元を訪れた五人からだけでなく、
五人へと託された、
ここに居合わせていない、彼等の大切な仲間達からの物も。
(中には、母親先輩でもあるイーベルやヒトミ達から贈られた、
育児などに関してのアドバイスノートなども。)
贈られたプレゼントの一つ一つ…全てが、
夫婦にとっての、新しい、大切な宝物だ。


「…もうパーシヴァルとマリンもお父さんとお母さんか…」
「先、越されちゃいましたね…」
ユウに追従して呟かれたアケチの声。
その言葉は、自身にも、テネジーにも、
そしてユウと彼女の隣に居る二人の女性にも向けられたようだった。

「…マリンさん。」
「ん?」
「本当に、大きくなりましたね。」
「だろう。大きくなるってわかってはいたけど、
お腹こんなに大きくなっちゃって、最初はびっくりしちゃったよ。」
「…お腹もですけど……ここも…。」
そう言ってテネジーが手で覆ったのは、
マリンもテネジーも大きくたわわに実っている、女性を象徴するふくらみ。
「…そりゃあ…ここも妊娠すると大きくなるらしいからな…」
「絶対今の私より大きいですよ…。ぐすっ…負けた…。
 みんなでファッティホエール号に乗ってた頃は、私が一番だったのに…。」
「く、悔しがらなくてもいいだろ…。それに、多分テネジーに子供ができたら、
 大きさは俺の負けになるよ、多分…。」
思わずマリンも苦笑い。
この会話には男性陣もちょっと顔を赤くしてしまいます。

「…予定日、もうすぐなんですよね。」
「うん。もうすぐなんだ、って、身体でも実感してる。
 ついこの間まで、この子、頻繁にお腹の中で蹴ったりしていたのに、
 最近はあまり動かなくなったんだ。
 もうすぐ生まれてくるから、赤ちゃんも動きにくい状態になったんだって。
 他にも、いくつもサインが起こってるんだ。」
大きくなったマリンのお腹を、ユイはまじまじと見つめる。
「少し、触ってもいいですか…?」
「ああ。」
ユイの手は、おそるおそる、マタニティドレス越しに、マリンのお腹に触れる。
「…あったかい…。」
そのあたたかさは、体温から得られるものだけではないと、ユイは思った。
お腹の中に育まれている、新しい命のぬくもり。
そして、命を包む、母の優しさのぬくもり。
とても神秘的で、美しく、優しいぬくもり。
そのぬくもりは、ユイにも幸せな気持ちをもたらしてくれる。
「マリンさん。」
「どうした、ヒカル?」
「僕も…触らせてもらって、いいですか…?」
「うん、いいよ…。」
ヒカルも、おそるおそる手を伸ばし、ユイと同じく、
その美しく、優しいぬくもりに触れる。
(なんてあったかいんだろう…。)
二人は、共に感じた。
新しく生まれようとしている親子のあたたかさを。
「…わかるか?
 今、お母さんの大切な二人の友達が、お前に優しく触れてるんだぞ?
 早くお前の元気な顔も見たいって…。
 いつでも元気に生まれて来いよ。
 お母さんも、お父さんも、みんなも、お前の事を待っているからな…。」
そして、今度はマリンの優しい手が、お腹に触れる。
慈愛に満ちた声で語りかけながら、愛おしくその命を抱き締めるように。
息を呑むような、美しい姿だった。
ユイも、ヒカルも、テネジーも、アケチも、ユウも、そしてパーシヴァルも、
マリンの見せた美しい「母の顔」に見惚れずにはいられなかった。
かつて、絶望の淵にいた少女は、
更に美しく、幸せな顔をするようになったのだ。

ユイとヒカルがマリンから一旦離れたところで、
今度はパーシヴァルが、優しくマリンのお腹に触れた。
「パーシヴァル…。」
今度は、最愛の夫に向けて、妻は優しく微笑んだ。
夫も妻に微笑み返すと、妻のお腹の中にいる我が子に、そっと語りかけた。
「…俺も早くお前の元気な顔を見たいぞ。
 お父さんもお母さんも、お前の事がとっても大好きだからな…。
 いつでも、待ってるからな…。」
「……………本当に…もう…すぐ…みたいだ…」
パーシヴァルの優しい声に応えたのは…少し苦しそうな、マリンの声だった。
「! おい、マリン! まさか、お前!」
パーシヴァルも、そしてユウ達も、マリンの異変に気付く。
彼女の身に何が起こったのか、この場にいる全員が、それを察していた。
「…始まった…みたいだ…。赤ちゃん…生まれてくる…。」



つづきます
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Secret

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プロフィール

無頼

Author:無頼
ようこそ。
どうぞ、ごゆるりと。

↓管理人の特に好きなパワポケCP
6主×瞳さん
羽柴君×夏海さん
10主×紫杏

6主×瞳さんスキーな同志、
随時求みます。

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