FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
line

二人の、最高のプレゼント

今日は6月4日。虫の日。
wayaさんの設定された羽柴君の誕生日ですね!

今年もSSでお祝いさせてもらいますv
今年は空族時代編の設定でお祝いさせてもらいますv
お話の時系列は、ED後で、『子守唄』よりも前となっています。

それでは、以下、本文です。
羽柴君、お誕生日おめでとう!



【二人の、最高のプレゼント】



「ねぇねぇお兄ちゃん、この虫さんはなんていうの?」
小さなその男の子は、木にとまったみんみん鳴く虫を前にして、
驚きでいっぱいの表情で、目をきらきらと輝かせながら尋ねます。
「ああ、こいつはな…。」
「お兄ちゃん」と呼ばれた男性は、優しい瞳でその虫を覗き込んでから、
男の子に向かって微笑みかけます。
「セミだよ。パライソゼミ。
 この種類のセミはこの国の、それもこのパライソ近隣でしか見られない、
 とても珍しいセミなんだ。」
「ぼく、セミって初めて見た…」
「…そうだな、セミはこの大陸の西側には殆ど居ないからな。
 東大陸と、ジパングにはいっぱい要るんだけどな。」
「セミって、どんな虫なの?」
「セミというのはカメムシ目・頸吻亜目・セミ上科に分類される…
…いや、スマン、わかりにくいな…。
簡単に言うと、鳴く事ができる虫の一種なんだ。
今もこうして鳴いているだろ?
このセミも幼虫の時はずっと土の中で暮らしていて、
 羽化する時期が来ると外に出てきて成虫になるんだ。
 …『アリとキリギリス』の話は知ってるか?」
「うん。」
「あの話はな、元々は『アリとセミ』という物語として作られたんだ。
 だけど、元々この大陸にはセミが殆どいないからわかりにくいという事で、
 『アリとキリギリス』のお話に変わったんだ。」
「そうだったんだ!? ぼく、はじめて知ったよ!」
改めてびっくりする男の子に対して、お兄さんは真面目な表情になって言葉を続けます。
「…セミはな、成虫になったら一ヶ月くらいで死んでしまうんだ。」
「ええっ!?」
男の子が、また驚きの声を上げます。
今度は喜びの驚きでなく、悲しい声で。
「セミさん、たった一ヶ月で死んじゃうの…?」
「成虫になったらな。
 幼虫の時はな、何年も…長い奴は十年以上も土の中でずっと生きているんだ。
 すごく長生きな虫でもあるんだ。
 だけど…成虫になって生きていられる時間は、ほんのわずかだ。」
「長生きでも…お日さまの下で生きられるのがそんなに短いなんて、
 やっぱり、かわいそう…。」
「…その短い時間を、セミは精一杯頑張って生きているんだ。
 一生に一度の、大切な人生をな。」
「……」
少し泣きそうな顔になっている男の子の髪を、
お兄さんは優しく、くしくしと撫でました。
「お前は本当に優しい子だな…。」
「ぼくも、がんばらなくちゃ…。」
「ああ、頑張れ…!
 お前はまだ小さな子供なんだ。まだまだ人生は長いぞ。
 だけど、人生は誰もが一生に一度のものだ。
 お前も、人生を大切に、これからも頑張るんだぞ…!」
「…うん…!」

「…あっ! お兄ちゃん、動かないでね。
 頭の上に、ちょうちょさんが止まったよ。」
「おう、わかったよ。」
男の子の言葉に、お兄さんは身体を動かす事無く、
頭上の蝶を逃がさないように努めます。
男の子はまたキラキラした瞳で、
お兄さんの帽子の上にとまる蝶をじっと見つめます。
「…すごくキレイなちょうちょさんだね。
 こんなキレイなちょうちょさんも、ぼく、はじめて見た。」
「…そのちょうちょさん、翅の色は赤・黄・青の三色じゃないかな?」
「うん。」
「この蝶はな…」

そんなお兄さんと男の子の姿を、優しく見つめる瞳がありました。
碧色の髪をした、若い女の人です。
「お姉ちゃん、もうすぐ?」
「ふふふ、もうできるから、あとちょっとだけ待っててな。」
「おねえちゃん」と呼ばれた女性は、目の前の女の子に微笑みかけると、
先程から続けていた手作業の速度を早めます。
お姉さんが作っているのは、
このお花畑に咲く、綺麗でかわいらしい花で作った、花の冠です。
♪~♪~♪
お姉さんの口から、静かで優しい歌声が響きます。
「お姉ちゃん…♪」
「お兄ちゃん、本当に虫の事は何でも知っているんだね!
 さすがはハカセだね!」
「ははは、何でも、って事は無いと思うぞ。
 まだまだ、知らない事もいっぱいあるんだ。
 だから、俺はもっと勉強して、虫の事をもっと知りたいんだ。」
ワクワクしながら目の前で待っている女の子の声も、
向こうでの男の事お兄さんの声も、
とっても心地よく聴こえます。


「わたし、似合ってるかな…?」
「ああ、すごく似合ってるぞ。」
「だな。更にかわいくなったじゃないか。」
「お姉ちゃん、きれい…」
「本当に!? ありがとう、みんな!」
作ってもらった花冠をかぶっての女の子の姿に、
お姉さんとお兄さん、彼女の弟である男の子からは正直な称賛の言葉が飛び出します。
その言葉に、女の子は大喜びします。
大喜びの女の子を前に、
原っぱに腰を降ろしたお兄さんとお姉さんも、お互い目配せして微笑み合います。
「お姉ちゃん。」
「ん、どうしたの?」
「はい!」
女の子は頭に被っていた花冠を下ろすと、
それを、これを作ってくれたお姉ちゃんの頭にかぶせました。
「お姉ちゃんも、すごくよく似合っているよ。
 お兄ちゃんと一緒で、まるで花嫁さんみたい。」
「え…」
屈託ない笑顔での女の子のその言葉に、
お姉さんは顔をほんのり赤くして、隣のお兄さんに顔を向けました。
「花嫁さん、だって…」
「……」
その言葉に反応して、お兄さんまで照れた様子です。

「ねぇ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、あのお話、つづき聞かせて。ぼうけんの話。」
「うん!わたしも聞きたい!」
「ああ、いいぞ。…で、さっきの冒険の話って
去年パリヴァールの砂漠地帯に行った時の話でよかったっけ?」
「合ってる。その時の三日目の話まで終わってる。」
「よぅし。その日、オアシスを出た俺達はな…」
青空の下、優しく太陽の光が照らされる原っぱで、
お兄さん、それにお姉さんは、幼い姉弟にお話を再び始めます。
今度は、自分達の今までしてきた冒険のお話を――。



「――それで、何とか無事にパリヴァールの街まで帰ってこれたんだ――って…」
熱弁を続けていたお兄さんの言葉が一旦止まりました。
「すー、すー…」
「くー、くー…」
お話を聞いていた女の子と男の子が、
二人ともお姉さんのあたたかい胸に抱かれて、気持ちよさそうに眠っていたからです。
「ふふ…お疲れ。もう二人とも寝ちゃってるぞ…。」
「いつから寝ちゃってた?」
「まだほんの数分前だよ。
 楽しく聞いていたけど、ぽかぽか陽気で眠くなっちゃったらしい。
 朝起きたのも早かったもんな。」
胸の中で静かに寝息を立てる子供達を、お姉さんは優しい瞳で見つめます。
「しばらくはここで寝かせるよ。
せっかく気持ちよく寝てるんだから、起こしちゃうのも悪いし。」
「ン…そうだな。話の続きは、また今度、だな。」
そう言って、お兄さんは原っぱにごろりと寝転びます。
「特等席、取られちまったな。」
「妬くなよ、初めてじゃないだろ?」
「子供には勝てんな…。」
気持ちよさそうに眠る子供達の寝顔を見て、お兄さんは静かに微笑みます。
「……」
お姉さんは目を瞑ると、愛おしそうに子供達の頭をそっと撫でます。
優しさとあたたかさに満ちたその姿は、まるで――
「お母さん、みたいだな。」
「…お母さん、か…。」
お姉さんはお兄さんを見て、また静かに微笑みかけます。
「じゃあ、お前は――」

初夏を迎えて間もないこの町で、
暑くない、気持ちの良い陽気の中、静かなお昼寝の時間は続きます――。

やがて、あたたかい原っぱに、歌声が響きます。
それは、優しい子守唄です――。





「くー、くー…」
「すー、すー…」
「すっかり寝たみたいだ。」
「だな。」
夜闇に包まれ、月明かりに照らされた一室で、
ベッドですやすやと眠る幼い姉弟の姿を見届けると、
パーシヴァルとマリンは、そっと部屋を出る。
「いいな、子供って…」
「……」
部屋を退室する時、マリンが静かに、ぽつりと漏らした。


パーシヴァルとマリンがこのパライソの街に、
パーシヴァルの実家に「帰ってきて」から数年。
春の研究出張を終えて、実家で日々を送っていた二人。
その二人と、パーシヴァルの両親が暮らす、初夏のパーシヴァルの実家。
そこに、北国から、異国で暮らすパーシヴァルの親戚一家が訪れた。
旧交を温めあう両家だったが、とある急用ができてしまった事により、
パーシヴァルの両親と親戚夫婦が一週間ほど家を外出する事になった。
そして、夫婦の子供である幼い姉弟は都合上連れて行けないという事になり、
タイミング悪く、家のお手伝いさん達も休暇をとって
この家を離れてしまっており、
しばらくこの家を離れる用事が無いパーシヴァルとマリンが、
二人の子供達の面倒を見る事になったのだ。


「お待たせ。」
「ああ。」
屋敷のテラスにて。
振り返ったパーシヴァルの目に映ったのは、
「ある物」が封入された箱を抱えた、マリンの姿だった。

――大事な話があるんだ――
子供達が眠る寝室を退室したところで、マリンが、そう切り出したのだ。
テラスで、先に待っていて欲しい、と。

「大事な話って…?」
「うん。昼間にも言ったけど…お誕生日、おめでとう。」
そう、今日は6月4日。
パーシヴァルの誕生日だった。
昼間には、子供達と一緒に彼にお祝いのメッセージを贈ったのだが、
マリンは、二人きりの場でもう一度、彼にお祝いを贈りたかった。
恋人だけの時間が、欲しかった。
「これ、今年の誕生日プレゼント。」
「…今開けてもいいか?」
「うん。」
マリンから「プレゼント」を受け取ったパーシヴァルは、
箱も傷付ける事無く、丁寧に開封し、中に入っているプレゼントを取り出す。
中から出てきた、彼女のプレゼント。それは。
「…これは…」
「…初めて編んだから、上手くできてないかもしれないけど…どうかな…?」
それは、彼女の手編みの麦わら帽子。
この日の為に、彼女が一人、パーシヴァルに内緒で作り方を勉強して、
この日に間に合うように編み上げた物。
帽子のつばの裏側には、彼の愛機である「インゼクター」のエンブレムと同じ、
蝶をあしらった絵が編まれていた。
全ては、彼女の手作りの物…。
「かぶっていいか?」
「ああ…。」
優しく抱き上げるように麦わら帽子を手に取ると、
パーシヴァルは麦わら帽子をかぶってみせる。
かぶった瞬間に感じる今までの感じた事のないあたたかみと、安らぎ。
それは、彼女の想いが形になったもの。
最愛の彼女からの想いは、いつだって、彼に幸せのぬくもりを与えてくれる。
「ありがとうな…。これから大事に使わせてもらうよ。
 早速、明日から使わせてもらうぜ。」
感謝の声と共に向けられる、パーシヴァルの優しい笑顔に、マリンの心が綻ぶ。
「プレゼント」によって、大切なものをもらったのは、マリンもまた、同じだった。
「痛んだら、いつでも言ってくれ。ちゃんと直すからな。」
「ああ、頼む。
 お前が心を込めて編んでくれた、大切な帽子だからな…。ずっと長く、使いたい…。」
そして、彼はその言葉通り、
この帽子は、数十年にわたって彼に末永く、大切に愛用される帽子となる――。

「前から思っていたけど、お前、本当にいいお父さんになれそうだよな。」
「…」
月と星の灯りに照らされながら続く、恋人だけの時間。
今日のこれまでの事を思い出しつつ、マリンから、言葉を続ける。
「近所の子供達との付き合いといい、今日のあの子達との事といい、
 お前と子供達を見ていると、心からそう思うよ。」
「お前も、同じだろう。…絶対、いいお母さんになれると思うぞ。
 子供達と接している時のお前って、本当に優しいもんな。」
「ん? これでも普段からお前にも優しくしているつもりだぞ?」
「いや、それはわかってるよ。…すまん、気に障る言い方をしてしまったな。」
「ふふ…冗談だよ。こっちこそ、すまなかったな。」
笑みを零すマリンに対し、
パーシヴァルはどこか、緊張しているようにも感じられる様子だった。
「子供と一緒に居るお前の姿を見るの、すっげぇ好きだな、俺…。
 今日の、二人を胸に抱いて寝かせていた時のお前も、すごく綺麗だった…。」
「そ、そうか…。ありがとう…。」
マリンの声にも、少しずつ、緊張の色が宿る。
パーシヴァルは、何か大切な意思を自分に伝えようとしている。
彼女には、それがはっきりと感じられた。
そして、その意思とは…きっとそれは、彼女が望んでいるもの。
ずっと、彼女が待っている言葉。
「…そろそろ、新しい家族が欲しいな…。」
「…えっ!?」
頬を少し紅く染めながらも、パーシヴァルはマリンに向かい合ったまま、
その瞳を見つめていた。
「俺も勿論、親父もお袋も、お前の事を大切な家族だって思ってるよ。
 それに、お前は…俺の大切なパートナーで、恋人だよ。」
「…うん…。」
「…俺達、そろそろ、本当の家族の家族にならないか。」
「…!」
そう、その言葉。
マリンがずっと待っていた、彼から伝えて欲しかった事。
パーシヴァルが、ずっと伝えたかった事。
「こんな素敵なプレゼントをもらったばかりだけど、
 俺、まだ欲しいプレゼントがあるんだ…。」
ズボンのポケットを押さえていたパーシヴァルの手が、マリンの目の前に開く。
手の中にあったのは、美しい指輪だった。
そして、その手はマリンの手に延びて――。
「…マリン、結婚してくれ。俺の妻になってほしい。」
マリンの左手の薬指にはめられたのは、ダイヤモンドの指輪。
「……どう、かな…?」
「……」
指輪をはめられた左手が、そっとパーシヴァルに延びて、
「……!」
「……ずっと…待ってた……」
そのままパーシヴァルの身体に抱きつき、彼の頬に顔を埋めたマリンの、
涙ぐんだ声が、彼に届くと共に、やがて、彼の頬を涙で濡らす。
ずっと伝えて欲しかった言葉が、
ずっと伝えたかった言葉が、
今、お互いに伝わった――。
「これからも、ずっと、俺と一緒に居てくれ。
 俺の、家族として…。俺の、奥さんとして…。」
「…うん…。…うん…!」
抱き合ったまま、二人は更に「近くなる」。
「…ずっと一緒だからな…これからも…」
「ああ…勿論だ。」
「んっ……」
この日、最初の二人の口付け。
最高の幸せの中での口付けは、永く、永く、続く――。


繋がる一つの想いは、更に大きくなり、二人は共に、更に未来へと進む。
それは、「家族」としての、更に新しい発進。

今日はパーシヴァルの二十○回目の誕生日。

その日は、二人が最高の「プレゼント」をもらった日――。



おしまい
line

comment

Secret

line
line

line
プロフィール

無頼

Author:無頼
ようこそ。
どうぞ、ごゆるりと。

↓管理人の特に好きなパワポケCP
6主×瞳さん
羽柴君×夏海さん
10主×紫杏

6主×瞳さんスキーな同志、
随時求みます。

line
カテゴリ
line
月別アーカイブ
line
最新トラックバック
line
最新コメント
line
最新記事
line
FC2カウンター
line
StyleKeeper
line
sub_line
検索フォーム
line
RSSリンクの表示
line
リンク
line
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

line
QRコード
QRコード
line
sub_line
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。