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子守唄

本日二回目の記事更新です。

実に一か月半ぶりのSS更新です。
今回の内容は、3月にポケスタさんで開催されました
『空族時代編』の世界を舞台にした、
ED後のパーシヴァル先生とマリンさんのお話です。
続き物予定、あと二話ほど続きます。
今回は非常に短い内容ですが、
次回は結構長めになるかと…。

それでは、以下の続きよりどうぞ。



『子守唄』



天国のような場所。
それは、この世界にも、いくつも存在している。

そもそも、天国とは何か。
それは、人々が心に思い描く、天上に存在する理想の世界。
人々が生きている「この世界」には存在しないとされる世界。

だが、その「存在しない」とされる、
人々が思い描く理想郷に似た光景が広がる地は、確かに存在していた。

パライソ。
この国の言葉で「天国」を意味するその田舎町に広がる光景は、
その名を形容するに相応しいものだった。
大きな争いが起こる事も、争いに巻き込まれる事もなく、
のどかで平和な日々を送る街の人々。
その小さな田舎町は小奇麗な家々が立ち並び、
周囲に広がる美しい自然と調和し、実に美しい光景を描いていた。
町に生きる人々は、誰もが心からこの町を愛し、
そして誰もが信じていた。
この町こそが、自分達にとっての「天国」だと。


そんなパライソの町の郊外には、広大な花畑が広がっている。
そこには地平線いっぱいに色とりどりの美しい花々が咲き乱れており、
その光景は見る者全てに感動を与え、心に優しい風を吹き込む。
季節は春。
冬が終わり、春風の訪れに合わせて、春の花々は芽吹く。
一斉に芽吹いた花々は、風景の色を様変わりさせた。
中でも特に風景を強く染め上げる色は、真紅。
この国の国花に指定されている花の色だった。
それは、この国の人々だけでなく、世界中の人々から愛されている花。
その花が、ここには地平線いっぱいに広がっている。
世界中どこを探し回ってみても、
この花がこれほどまでに広く、多く、美しく咲く地は、
この地を置いて他には無いかもしれない。
広大な真紅の花の海が生み出す情景は、
まさに「天国」と形容するに相応しい美しさだった。


♪何処に いても わたしは いのち あなたの

その美しい花畑に、今、美しい歌声が響いていた。
全てのものにあたたかさを運ぶ春風にも負けない、
優しさとあたたかさに満ちた歌声。
透き通った歌声は春風に乗って広がり、
天国のような美しい情景を、より美しく彩る。

♪あたたかな ひとときと あたたかな夢 見せたい

歌声の主――マリンは、一人花畑の中に佇む切り株に腰掛けて、
眼前に広がる天国の情景を眺めながら、優しく歌声を紡ぎ続ける。
その顔には、歌声が示すような優しい笑顔が浮かんでいた。

古代遺跡『ファントゥーム』を巡る長き戦いが終焉を迎えてから、
既に数年の月日が流れて…
マリンは今、「天国」にも似たこの町の住人となっていた。
あの戦いが終わった後、
彼女は学者であり、仲間であり、そして恋人のパーシヴァルの助手となり、
パーシヴァルと共に世界中を飛び回る毎日だった。
マリンは今やパーシヴァルの学者活動においても
絶対に欠かせない助手となっており、
公私共に、彼の最高のパートナーとなっていた。
そして、今からちょうど一年ほど前に、
マリンとパーシヴァルは正式に入籍を果たし、結婚。
二人は晴れて、夫婦となった。

そんなマリンが今帰るべき家。
それは、パライソの町にある、パーシヴァルの実家。
あの戦いが終わり、二人が一緒に旅立ってから、
彼が帰るべき家は、彼女にとっても帰るべき家だった。
二人は共に世界各地を飛び廻っている事が多いので、
「家」に長く留まれない事も少なくないが、
マリンはすぐにパーシヴァルの両親やパライソの町の人達とも仲良くなり、
新たな「故郷」になったパライソの町もすぐに好きになった。

この一年ほどの間、マリンは以前ほど町の外へ出向く事は無くなった。
具体的に言えば、
パーシヴァルの助手として、彼と共に外国へ行く機会が減った。
勿論、それには理由があり、事情がある。
この一年の間、マリンが助手として
外国でのパーシヴァルの活動に同行していないのは、
他ならぬ夫・パーシヴァルの意向でもあった。
マリンがパーシヴァルの助手としての活動を自粛している理由。
それは――。


「あたたかな夢 見せたい…」
清らかな歌声が、徐々に涙に滲んでいき、やがて、歌声が止まる。
マリンは頬を伝う涙を拭う事無く、空を仰ぐ。
眩しい陽光が、涙に濡れる目に滲んだ。
「父さん、母さん、シュネー先生…あと、一ヶ月だよ…。」
涙に濡れたその笑顔は、美しい。
「あと一ヶ月もすれば、俺、もうお母さんになるんだよ…。」
そっとお腹に手を触れる。
大きく膨らんだお腹。
そこには、新しい命が宿っている。
「順調だって。もうすぐ、生まれてくるんだよ…。俺とあいつの赤ちゃん…。」

マリンの妊娠が発覚したのは、結婚から四ヶ月ほどが経過した頃だった。
血の繋がった家族を亡くしてから十年近くの時が流れて。
彼女に、子供が生まれる。
自分と、最愛の男性の血を分けた、最愛の我が子が。
もうすぐ、自分の、自分達の家族が増えるのだ。

マリンがしばらくの間助手としての活動を自粛しているのは、
身重のマリンと、お腹の子供を気遣っての、パーシヴァルと彼女の配慮であった。

今日、彼女がこのお花畑を訪れたのは、
病院での定期健診を終えた後の事で、彼女の希望だった。

(この子にね…毎日、歌ってあげてるんだよ…。
母さんが、シュネー先生が歌ってくれた、あの歌を…。)
あの歌。
それは、先程までマリンが花畑に響かせていた、
透き通ったあたたかくも美しい歌声で紡いでいた、優しい歌。
それは、子守唄であり、マリンにとっての、大切な思い出の歌だった。

子供の頃、自分を寝かしつける時に、母がいつも歌ってくれた子守唄。
我が子を抱く母の温もりと共に、
愛情に満ち溢れた母の子守唄を、マリンは片時も忘れた事は無い。
家族を亡くした後の、地獄のような日々から自分を救ってくれた恩師・シュネー。
過去の辛い記憶に苦しむマリンを救うように、彼女が歌ってくれた子守唄は、
驚くべき事に、母が歌ってくれたものと全く同じ子守唄だった。
母と同じように、愛情に満ち溢れた歌声で、
彼女はマリンの心を救い、癒し、あたためた。

そう、それは、二人の「母」との思い出の歌。
母の、子への愛情の象徴。

そのマリンが、今は子守唄を歌う側となる。
生まれてくる、愛しい我が子の為に。

(夢…みたいだよ…。俺が、お母さんになれるなんて…。
 幸せに…お母さんになれるんだよ…俺…。
 お母さんが、シュネー先生が俺に歌ってくれたあの歌を、
 これからもこの子に歌ってあげられるんだよ…。)

かつてマリンは女性としての、人間としての尊厳を踏み躙られ、奪われた。
心を切り裂かれ、その美しい身体を穢された。
大切な人を何人も奪われ続けた。
一時、生きる希望を全て失うほどに、彼女の心は閉ざされていた。
全てが、絶望に塗りつぶされそうだった。

だが彼女は、今、幸せの中に居る。
辛い過去を乗り越えて、幸せを掴み、
希望の光に照らされて、最愛の人と一緒に、未来へと歩んでいる。
その彼女の未来を更に明るく照らす、新たな光。希望。
彼女がその身に宿した、初めての新しい命。
花開く命、希望、奇跡。
新しい幸せと希望に満ちた物語が、もう動き始めている。

(俺…この子の事…たくさん…愛して…
 絶対に…幸せにするからね…。
 父さんが…母さんが…シュネー先生が…俺にしてくれたみたいに…。
 だから…これからも、見守っていてね…。)
何処にいても、大切な人は、永遠に――。
涙に濡れたマリンの笑顔は、彼方へと向けられる――。


マリンの頭に、何かが乗せられる。
同時に、甘い花の香りがより近くなり、彼女の鼻腔をくすぐる。
「ぁ…」
振り返ると、そこに居た彼はマリンの頬に涙の痕を見つけて、
一瞬申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「…すまん…。」
「謝るなよ。色々思っていたら、涙が出ちゃったんだ。」
最愛の夫・パーシヴァルにそう告げると、
マリンは頭上にそっと手を触れる。
「今年も…作ってくれたんだな…。」
「…相変わらず、よく似合っているぞ。」
少しの間、パーシヴァルがマリンの隣を離れて作っていたもの。
それは彼女の頭に丁度いいサイズの、美しい花飾りだった。
「写真、撮ってくれないか?」
「勿論。」

「早く、この子にも見せてあげたいよ。
 お前のお母さんは、こんなに綺麗でかわいいんだって。」
「馬鹿野郎…」
カメラを仕舞うと、パーシヴァルは優しい手で、妻のお腹に手を触れた。
「…元気で生まれてくるといいな…。」
「大丈夫だ。俺とお前の子だろ? 元気いっぱいに決まってるさ。」
お腹と一緒に、夫の頭をそっと撫でる。
「俺も…この子と、お前の命だからな…。」
「パーシヴァル…。」
「幸せにする。二人とも、絶対に…。」
マリンのお腹に頬を寄せ、顔を上げると、
パーシヴァルは最愛の妻に、そっと顔を寄せた――。

(ずっと、信じているよ―お前の事―。)
世界中の誰よりも、信じている。
最愛の夫の事を――。


「もう一度、歌ってもらえないかな?」
「うん?」
「さっきの歌、ここでもう一回聴かせて欲しいんだ。」
「…うん。」
頷くと、マリンは一度目を閉じて、再び優しい声で歌を紡ぎ始める。
我が子へ、夫へ、愛しい人達への想いを込めて。

天国のような花畑の情景に、再び響く歌声。
それは、幸せの子守唄――。
幸せを掴んだ一人の女性への、愛しい人達に贈る歌――。



つづ
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