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居場所

『空族時代編』投稿作品。
タワシさん、wayaさん、ペケさん、クロルさん、
キャラと物語設定をお借りしました。

以下、SS本文になります。



『居場所』



「ど、どう、かな…?」
澄み切った空のような美しい色の、水色のワンピースを纏った少女が、
やや緊張した表情を湛えて、くるりと回ってみせる。
「すごくかわいいよ! 似合ってる!」
水色のワンピースを纏った少女に対し、
彼女とほぼ同じ年齢であろう少女から、称賛の声が贈られる。
「うにゅー、確かにかわいいけど…そうね…」
称賛の言葉を贈った少女の傍らに立つ、
もう一人の若い、艶っぽさと幼い雰囲気を共に色濃く纏った女性が、
じっくりと水色のワンピースを纏った少女の姿を見渡すと、
彼女はワンピースの少女の、ポニーテールに束ねられた髪をほどく。
ワンピースにも負けないくらいに、
それ以上に美しい青色の髪がふぁさりと広がり、
ポニーテールの時とはまた違った可憐な美しさ覗く。
「わぁ…」
先程称賛の声を贈った少女は、新たに更なる可憐な姿を披露した友人の姿に、
思わず感嘆の声を上げた。
「あたしはこっちの方がとってもかわいいと思うな。…ユイはどう?」
ほどいた髪をとかしつけたところで、
彼女――サクラは、青色の髪の少女――ユイを鏡の前に立たせた。
「ちょっと、不思議な感じがするな…」


世界でも有数の大都市・ブランシェ。
今日も平和を謳歌するこの街で、
空族のクロエ・ユウと彼と共に往く仲間達は、束の間の休日を楽しんでいる。
各々のメンバーがそれぞれの事情や目的で休日を過ごす中、
その内の女性数人が、この街の一角にあるブティックの一店にて、
服のショッピングを楽しんでいた。


「いつものポニーテールもとってもかわいいと思うけど、
 ワンピース姿には、あたしはこっちの方が似合うと思うな~。」
おしゃれが大好きで、
ファッティホエール号に集う仲間達の中でも、特に多く衣装を持つサクラ。
彼女は自分がおしゃれをするのも勿論だが、
おしゃれをさせるのも大好きだ。
「サーヤは、どっちが似合うと思う?」
ユイは自身に称賛の声を贈った友人のサーヤに対して、
そう問いかけて意見を求める。
「あたしはサクラの意見に同意かな。
 ワンピース姿なら下ろしていた方が合っていると思う。」
「そ、そう…。」
照れ笑いを浮かべながら、ユイはもう一人、意見を求めたく、
そのもう一人の仲間へと、意見を求める。
「マリンの意見も、聞きたいな…。」
「…俺は…」
静かに様子を見守っていたもう一人の仲間、マリンは、
少し悩みむような素振りを見せつつも、
「…そう、だな。俺もサクラとサーヤの意見に同意するよ。
 下ろした姿も、とっても素敵じゃないか。」
柔和な笑みを浮かべて、マリンは同意の意見を述べた。
「じゃ、じゃあ、これを着る時は、髪、下ろしてみようかな…。」
「にゃはは。二人もこう言ってくれたし、それがいいと思うよ。」
依然少し照れた様子のユイに対し、サクラはそう笑いかけると、
もう一度ユイの身体を改めて見渡し、じっと顔を覗き込む。
「でも…他にもやっぱり、
ちょっとセクシーな衣装も捨てがたいと思うんだけどな~。
もっと、露出の多いような…。フェイちゃんも言ってたけどね…。」
「そ、そういうのはもう結構!」
「うにゅー、残念だな~。絶対似あうと思うんだけどな~。」
以前のある出来事の事もあり、ユイは即座にサクラの提案を拒否してしまう。
「サーヤはどう? よかったら、何かセクシーなの着てみる?」
「うん! 着てみる!」
「最近ずっと思っていたけど、サーヤ、最近すごく色っぽくなったね。」
「ユイもそう思ってくれたんだ…。ありがとう。
 …サクラのおかげなの…。サクラがあたしを女にしてくれたの…。」
視線を一度サクラに向けると、サーヤは目を瞑り、頬を赤らめた。
「うみゅ~? もしよかったら、ユイもあたしがもっと一人前の女に
 し て あ げ よ う か ?(はぁと)」
「い…いや、あの…ご、ごめん…! 
 気持ちは嬉しいけど、私は大丈夫だから!」
艶のあるセクシーな、そしてどこか獲物を狙う肉食獣にも似た視線を感じて、
ユイは慌てて、サクラの申し出をお断りする。
「うにゅ~、またまた残念…」

そんな三人の様子を見守りながら、マリンは一人、静かに微笑んでいた。
胸に穏やかな風が流れ、改めて感じる。
平和だな、と。

恩師のシュネーをカメダ軍団によって亡くし、
彼女の仇討の為にファッティホエール号の仲間に加わったマリン。
当初は他の仲間達と距離を置き、積極的に関わり合う事も無かった彼女だが、
今では仲間達と打ち解け、皆と一緒に穏やかで楽しい時間を過ごす機会も多くなった。
シュネーと出会う前の辛い過去も自ら打ち明け、
仲間達は改めて、マリンの全てを受け入れ、
マリンと仲間達の心は、距離は、更に近いものとなっていた。

この日、マリンは初めて、同性の仲間達と新しい衣装の購入の為に、
街のブティックを訪れていた。
今までいつも基本的に同じデザインの、
顔以外の肌を見せないような装束ばかりを着こんでいたマリン。
その彼女が、初めて、同性の仲間達と一緒に、
一緒にブティックに行きたい、と、そう申し出た。
それは、仲間達にとっても、とても嬉しい話であった。
現在、マリンはこのブティックに、
ユイ、サーヤ、サクラの三人と一緒に訪れていた。


「よし! 今度はこれでクロエさんにアタックしよう!」
「あたし達はセクシーさで勝負だね!
 ユイ、あたし達も絶対負けないつもりだよ!」
「だ、だから…! 私とクロエ君は幼馴染で、ずっと付き合いは長いし…
 友達として、仲間として彼の事は…好きだけど…
 そ、そういう好きというのとは…まだ違うから…!」
「みゃはは、またまた照れた事言っちゃって…。
 お待たせ、マリン。ごめんね、時間かかっちゃって。」
「気にしなくていいぞ。最後でいいって言ったのは俺の方だからな。」
ユイ、サーヤ、サクラの三人の新しい服探しが終わり、
いよいよ、マリンの試着の番。
「任せて! マリンにとっても似合う服、しっかり探し当てて選んであげる!」
「ありがとう。それで…一つリクエストがあるんだ。」
「うみゅ? どんな?」
「…サクラやサーヤが選んだような、
 少し露出のあるような…男性の目を引けるような感じのをお願いしたいんだ。」
「えっ!?」
「マ、マリン…!?」
マリンのその言葉に、三人の表情に動揺が現れる。
マリンが肌の露出を殆どなくした衣服を着続けていた理由。
それは、彼女のシュネーと出会う以前の、「過酷極まりない過去」に起因していた。
三人も大きなショックを受けた、マリンの過去。
その彼女が、自ら進んで、露出のある、男性の目を引けるような服を望んでいる。
三人が衝撃を受けるには、充分すぎた。
「マリン、本当にそんな感じの服を選んでいいの…?」
「ああ、お願いする。あ、ただ胸から下の…
お腹が露出するようなのや過度な露出のはちょっと勘弁な。」
「うにゅー、わかったわ。じゃあ、ちょっと来て。」


「お待たせ…どうかな?」
やがて、マリンとサクラが試着室に消えてからしばらくした後、
二人は試着室からユイとサーヤの前へと戻ってきた。
少し照れくさそうな表情で戻ってきたマリンの姿に、
ユイとサーヤは、一瞬驚きとも感動ともとれるような表情で固まり、
その口から感嘆の感情を含んだため息が漏れた。
美しいプロポーションのとれた身体を鮮やかに包み、
胸元と両手を露出させた、美しい碧色のドレス。
美しさの随所にセクシーさも盛り込まれたそのドレスは、
それは、マリンの生まれ持った女性としての美しさを、魅力を、
十二分に引き立てていた。
「綺麗…。」
「マリン、すごいよ…。すごく綺麗だよ…!」
「ありがとう、二人とも。 サクラにもそう言ってもらえたよ。」
「本当の事だもの。 綺麗じゃないわけがないわ。
 (うみゅー、おまけにすごくセクシーじゃない…。
このセクシーさ、あたしに匹敵するレベルだわ…!)」
ドレス姿のマリンを改めてまじまじと見つめながら、内心唸るサクラ。
「さっきユイも言っていた事だけど、俺も同じ気持ちだ。
 本当に、不思議な気持ちだ…。
 なんだか、俺が俺じゃないみたいだよ…。」
(((かわいい…)))
ほんのりと頬を染めてそう言葉を続けるマリンの姿は、
同性であるユイやサーヤ、サクラの目から見ても、
はっきりとかわいいと思えるものだった。
「うにゅー、でも、本当にビックリしちゃったわ。
 まさかこういうタイプの服を選んでほしいなんて言われるとは思ってなかったもの。」
「…俺も、着てみたくなったんだ…。」
「…どうして?」
「どうしてって…それは…その…」
「…もしかして、恋?」
話が進むにつれて一層頬を赤くし、口ごもりも進行していくマリンに対して、
サーヤが爆弾発言を放った。
「「恋!?」」
「!」
ユイとサクラもハモって発せられたキーワードを繰り返す。
同時に、マリンの顔にもはっきりと動揺の色が表れる。
「うにゅ? マリンさっきよりも顔が赤くなっているよ?」
「サ、サーヤが変な事を言うからだ…。」
「もしかして、図星だった?」
「い、いや……違う…。どうして俺があんな研究バカと…」
否定しようとする彼女の声は、弱弱しいものだった。
いや、そもそも聞いていないことまで答えているような。
非常に小さく、弱弱しい声だったが、
地獄耳のサクラは、それを聞き逃す事は無かった。
瞬間、にまっとサクラは微笑んだ。
「あっれ~? 誰もパーシヴァル君の事なんて言っていないけど~?」
「!? ど、どうしてそこであいつの名前が出てくるんだ!?」
激しく動揺した様子を見せるマリンの姿に、三人は悟る。
図星だったんだな、と。
そして同時に、安心と、嬉しさが、三人の心に広がる。

三人にとっても、「彼」の存在が思い当たるのは自然だった。
ずっと、「彼」と彼女の関係が気になっていたから。
関係は、ずっと進んでいたようだ。
そう、いい方向に。

「にゃはは、この一着だけじゃ足りないでしょ!
 まだまだ他にも選んであげるわよ!」
「だ、だから…俺はあいつに、そこまでそういう気があるわけじゃ…!」
サクラに引っ張られて、マリンは店の奥へと再び姿を消した。
その姿を、ユイとサーヤは微笑ましそうに見送った。
(やぱり、恋って素敵なんだね…)
声に出さずに、ユイは心中で、そう呟いた。


そう、本当に平和だった。
そして、はっきりと感じる。幸せだ、と。
だが、同時に一つの不安も、彼女の心中に広がっていた――。

この後、四人はそれぞれの用事から戻ってきた他の女子メンバーと合流。
街での幸せなひと時を、皆で楽しく過ごした――。





その日の夜、ファッティホエール号の仲間達の宿泊するホテルにて。
マリンはそのホテルのとある一室の前に居た。
その部屋に宿泊している人物に話があり、その為にここに来たのだ。
その人物は用事の時間が長くかかったので、
まだホテルに戻ってそれほど時間がかかっていなかったので、
その人物が戻ってきてある程度時間が経ったところで、
彼女は今こうして、彼の部屋を訪れようとしていた。
コンコン。
「俺だ。お邪魔してもいいか?」
「どうぞ。」
了承の返事が聞こえたのを確認すると、マリンはドアを開けて、室内へと足を踏み入れた。
「お疲れ。」
「よぉ、おつか……」
部屋の宿泊者は、軽く挨拶をするも、部屋に足を踏み入れた彼女の姿を見た瞬間、
驚いた表情になり、彼女の姿をまじまじと凝視した。
「彼」の視線に、僅かにマリンの頬が赤くなる。
「…どうした?」
わざと平静を装うが、内心は、彼女も非常に緊張していた。
「い、いや…どうしたんだ、そのドレス。」
「今日街で買ってきた。サクラに選んでもらった。」
「そ、そうか…。綺麗だぞ、すごく。良く似合っている…。」
そう答える「彼」――パーシヴァルもまた、同じだった。
表面上は平静を装っているが、
彼もまた、内心ではどこか動揺した、緊張した様子だった。
「…なあ?」
「何だ?」
「どうして、そのドレス…」
パーシヴァルも、マリンの過去のトラウマ、そして肌を露出させない、
「女性らしさ」を意識しない服ばかりを着ていたことを、よく知っている。
仲間達の中で、彼女の最も近いところに居るのは、彼なのだから。
「着たくなったんだ。俺もこんなドレスを。
 気に入ったよ、これ。選んでくれたサクラには感謝してる。
 このドレス姿を褒めてくれたみんなにも。」
今まで殆ど着用する事のなかった、女性らしさを強く意識したドレス姿。
自身のそんな姿をもう一度見渡してから、
マリンはパーシヴァルに向けて、静かに微笑みかけた。
「それに…お前にも、な。」
「俺に…?」
「こんな服を着たいと思うようになったのは、ある意味お前のおかげだからな。」
「…わざわざ、見せに来てくれたのか?」
「…ぅん…まぁ、今言ったように、ある意味お前のおかげでもあるからな…。
 他に数着購入したんだが、これが一番気に入ってな。
 他のは、また今度な。一応、どれもお前の好きそうなのだと思う。」
「あ、ああ…、楽しみにしてる…。
 …って、おい、それってまさか…わざわざ俺の好みにも合わせるように選んだのか!?」
「…さて、な…。」
驚いて問いかけるパーシヴァルに対し、マリンは回答をはぐらかす。
尤も、その返答と様子では、殆どはぐらかしにもなっていない気もするが。
「なぁ、今日買い物以外にも何があったんだ?
 買い物の事も含めて、よかったら話してくれないか?」
「ああ、今日はまずな…」
そして、マリンは話し始めた。
今日朝起きてから、仲間達とどのように楽しく時間を過ごしたのか。
どんな楽しい出来事があったのかを。


「……とまぁ、そんな一日だった。」
「そうか。今日一日、とっても楽しかったみたいだな。」
「ああ。」
その短い返事の中に、たくさんの喜びの気持ちが詰まっている。
そう、本当にとても楽しかった。
「それを聞けて、俺も嬉しい。ありがとよ、いい話が聞けた。」
「礼を言わなきゃいけないのは、俺の方だな。
 本当にありがとな、いつも助けてくれて…。
 今こうして皆と楽しく時間を過ごせるのも、
 皆のおかげで、お前のおかげでもあるよ…。」
「…照れるな…。」

恩師のシュネーを目の前で殺されてから、
マリンの生きる目的は、ただ「復讐」を果たすため、のみとなった。
それまで奴隷にされて地獄のような日々を助けてくれて、
長く忘れていた幸せな生活を、愛情をくれたシュネー。
その彼女を身勝手な目的の為に殺害したカメダ軍団を、
マリンは許す事などできるはずがなかった。
恩師の復讐さえ果たせれば、自分はもうどうなってもいい。
一時そこまで思い詰めていた彼女の心を救ったのは、
パーシヴァルであり、そして、ファッティホエール号に集う仲間達だった。
あたたかい仲間達との交流の中で、
暗く悲しい感情に囚われた彼女の心は救われ、
続く戦いの中であっても、
彼女の心は、今はっきりと、仲間達との幸せを感じていた。
そして、いつもすぐに助けてくれたのは、パーシヴァルだった。
まだシュネーが生きていた頃に、初めて彼と出会った時から、
彼はいつも、マリンを助けてくれた。
敵との戦いで窮地に陥った時も。
マリンが一人で悩み、苦しんでいた時も。
マリンが心に深い傷を負った時も。
いつも。いつも。
傍には、パーシヴァルがいた。

そして、昼間にサクラ達に対してあのように返答はしたが、
マリンは、今ではパーシヴァルの事が――。


「…なぁ、何か、悩んでいるのか?」
「な、何でだ?」
「顔にそう書いてある。わかるんだよ、俺には。…話してみろよ。」
「…相変わらず、鋭いな、お前…。」
パーシヴァルは女好きではあるが、恋愛感情に関しては妙に鈍感なところもあった。
だが、人の心の変化には機敏だった。
そして、マリンはそんな彼を強く信頼している。
今では、彼に自身の悩みを、素直に打ち明けられるほどに。
マリンの表情から、笑みが消える。
「…お前は、これからもずっと学者を続けていくんだよな…?」
「ああ、勿論。今は何よりファントゥームに辿り着いて、
そこに住んでいる生き物たちを発見して研究したい。
だけど、世界は広い。
この地球上で、人間の目に触れた生き物は、ほんの一握りなのかもしれない。
まだ見つかっていない生き物だってきっとたくさんいるはずだ。
それに、既に発見されている生き物だって、わからない事が山ほどあるんだ。
俺は、この地球に生きる生き物の事をもっと知りたい。
まだ誰も知らない事を、もっと確かめたいんだ。
だから、俺はこれからも学者を続けていく。
ファントゥームを巡る戦いが終わって、
ファントゥームの生き物の研究も終わって、
ファッティホエール号のみんなと別れた後も、
死ぬまでずっと、な。」
そう語るパーシヴァルの様子は、非常に生き生きしていた。
彼は本当に、自身の生き甲斐に強い誇りと、大きな夢を持っている。
その事を、改めて感じる。
「…俺は、未来が怖いかもしれない…。」
「…未来が…?」
マリンの表情に、影が落ちる。
「…俺、今お前と…ファッティホエール号のみんなと一緒に居るのが、すごく楽しい。
 正直に言うと、戦いはやっぱり大変だし、辛い。
 泣きたくなることだって、いっぱいあるよ。
 だけど、みんなと過ごせる時間が、本当に楽しい。
 家族が生きていた頃にも、シュネー先生が生きていた頃にも負けないくらい。
 はっきり言うよ。今、俺幸せだよ。」
「マリン…。」
一度微笑みかけたマリンだが、再びその表情から笑みが消える。
「だけど、いつかは、全てが終わったら、みんな、離れ離れになるんだよな…。
 その時が来るのが、すごく、怖いんだ…。
 …情けないよな、俺なんかよりもっと辛い過去を背負って、
 それでも元気に頑張っている仲間だっているのに…。」
「…お前だけじゃないさ。
 お前と同じような悩みを持っている奴は、他にもいる。
 正直に言うとな、俺もその時が来るのは怖いと思う事もある。
 せっかく仲良くなった仲間達と離れ離れになるのは、誰だって寂しく思うさ。」
「……。」
「けど、必然な出会いもあれば、必然な別れだってある。
 別れの後も、前に進めるさ。前に進めるよう頑張るさ。
 それに、その別れが永遠とは限らないぜ。
 きっと、別れた後も、みんなとはいつかまた出会えるって、俺はそう信じている。」
「…お前は、強いな…。
 だけど、俺はやっぱり別れが怖い…。もう、味わいたくないよ…あんな想いは…。」
僅かに、マリンの目元が潤み、光るのが見えた。
「っ!? すまん…。」
家族との永遠の別れ。孤児院の仲間達との別れ。恩師との永遠の別れ。
マリンは、あまりにも辛すぎる別れを幾度も経験してきた。
そして、幸せを打ち砕かれるその時も…。
故に、彼女は他者よりも、ずっと恐れていた。
大切な人との別れを。大切なものを失う事を。
謝罪するパーシヴァルに、マリンは静かに優しく微笑みかける。
「いや、気にしないでくれ。お前は何も悪くないよ。
 …ありがとう、また相談に乗ってくれて…。」
そう言って、マリンは立ち上がる。
「夜遅くに失礼したな。もう部屋に戻るよ。
 他の服は、また今度見せるから。じゃあ、おやすみ…」
そう言い残し、部屋を後にしようとするマリンだったが、
彼女は部屋を立ち去る事は出来なかった。
パーシヴァルが、マリンの身体を背後から抱き寄せていたからだ。
「…待てよ。まだ俺からの話は終わってないぞ。」
「……」
後ろから抱き締められて、マリンは羞恥心と、そして嬉しさに、
ほんのりと赤くなった頬は、やがて加速的に熱を増していった。
「さっきも言ったよな。みんなと別れる事になった後も、学者を続けるって。
 だけどな、研究も、一人じゃ大変な時もあるんだ…。」
「え…?」
「よかったらでいい…。
 戦いが終わった後に、俺の助手になってくれないか…?
 お前に、色々と手伝ってほしい…。
 そして……俺と一緒に居てほしい。
 絶対に、もうお前を独りにしない。何かあったら、絶対に俺がお前を守る。」
「!」
その言葉が何を意味しているのか、それがわからないマリンではなかった。
嬉しさで、目頭が熱くなってきた。
そして、とめどなく涙が溢れてきた。
「俺なんかで、いいのか…?」
涙溢れるマリンの顔を見つめて、はっきりと、力強くパーシヴァルは「その言葉」を放った。
「お前でいいんじゃない。お前がいいんだ。」
「あり…がとう…」
涙に濡れた顔で、マリンは微笑んだ。
「マリン…」
「んっ…」
そして、二人の影が静かに重なり――

その夜、二人は、身も心も結ばれた――。


翌朝、二人が同じ部屋から一緒に起床して出てきたところを仲間達に見られて、
色々と幸せな騒ぎが起こるのだが、それはまた別の話。
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Secret

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プロフィール

無頼

Author:無頼
ようこそ。
どうぞ、ごゆるりと。

↓管理人の特に好きなパワポケCP
6主×瞳さん
羽柴君×夏海さん
10主×紫杏

6主×瞳さんスキーな同志、
随時求みます。

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