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Wish of Eternity 第1話 Rebirth~新しい旅路へ

お久しぶりです。
27日どころか更に四日遅れての更新ですいません;
13裏連載SS第1話が完成しましたので掲載します。
今回から13裏本編のキャラクターも登場です。

次回の連載SSの更新は、またしばらく先になります。
ご了承ください。

それでは、よろしければ下の続きからどうぞ。



澄み切った青空の下、
今日もこの街は人々の喧騒で賑わっている。
空にも劣らない美しい青の輝きを放つ海は
ただ静かに、そして穏やかに、海面に波を揺らめかせ、
照りつける太陽の光は眩く反射し、煌めいていた。
そんなこの街の青く美しい海に、今日も船はやってくる。
かつてこの街を発ち、この街へと帰ってきた船もあれば、
遠くの国から海を越えて来訪した船もある。
目的は様々であるが、
いくつもの船がこの街の海に、港に停泊する。
そして、船が港に姿を現す度に、
それを迎えようと多くの人々が港に駆けつける。
その度に、港は人々の喧騒に一層包まれて、賑やかさを醸す。
港が賑わうと共に、街もまた、賑わいを見せる。
平和な港町の光景。
それが、この街の日常と聞く。
人々の賑わうこの街の中に、俺は居た。
働きの為に、頭を動かし、手を、足を、動かしていた。
人々の賑わう姿を目にし、賑わう声を耳にしながら、
今、自分ができる働きに精を出していた。
(今日も、この街は平和だな…)
汗水流して働きながら、人々の賑わう姿を目の当たりに、
率直に心中でそう呟き、漏らす。
「スウォンく~ん!
 ちょっとこっちの作業も手伝ってくれないか!」
「あ、はい!すぐに行きます!」
名前を呼ばれて、すぐに名を呼ぶ人の方へと向かう。
その時の表情と心は穏やかで、晴れ晴れとしていた。

同時に、改めて思い、気付く。
今、こうして、頭を動かして、身体を動かして、
地に足を着けて生きていられるのは、本当に不思議だ、と。
そして、今生きているという事そのものに、
自分が喜びを感じているという事に。
忘れていた、生きる事の喜び。
一度失ったそれが、再び芽生えつつあった。

全ては、あの時から、再び始まった――。



『パワプロクンポケット13 海洋冒険編 Another Story
Wish of Eternity
  第1話 Rebirth~新しい旅路へ』



海に投げ出されて、もう何日も海上を独り漂流して。
もう二度と目を開ける事は無いだろうと、目を閉じて。
気が付けば、俺は既に深淵の闇で漂っていた。
真っ暗で、何も見えなくて、何も聞こえなくて、
何かの存在を感じる事の出来ない世界。
そこに在るのは、自分の存在だけ。
暗黒であり、無。
そこには、確かに苦しみは無かったのかもしれない。
だが、安堵も無かった。
漂っているようにも、飛んでいるようにも、
落ちているようにも感じられ、妙な感覚に捉われた。
同時に広がる不安。
このまま、何も感じず、何も考えられず、
何も思い出せない世界へと、
自分は消えていくのではないのだろうか――。
そう不安を抱く自分は、
やはり心のどこかに、死への恐怖を抱いていたのだ。
しかし、死への恐怖を改めて認識したところで、
意識はこの世界から覚める事は無かった。
ただ、暗黒の中、彷徨するばかりだった。

どれほどの時が流れたのか、
突然、暗黒の世界に変化が訪れた。
自分を包んでいたどこまでも果てしなく広がっていた暗闇が
まるで夜明けとともに去る夜闇のように消えていき、
世界に光が広がった。
そして、遠くに見えた。
現実世界から永遠にいなくなってしまった、
自分と親しかった人達の姿が。
家族の、故郷の村の人達の、友人達の姿。
ずっと「逢いたい」と願っていた人達の姿。
瞬間、心の内に死への恐怖以上に、安堵が広がっていった。
ここが死後の世界だというのなら、
ここで親しい人達と再会できて、
これからは永遠の安らぎの時を皆と共に過ごすことができるのなら、
それでいいのではないか。
いや、それ以上の幸せが、どこにあろうか。
もう、苦しむ必要はない。ここでみんなと、永遠に…。
駆けだそうと、足を動かそうとした。
しかし、足が動くことは無かった。
駆け出したいと、みんなの元に行きたいと、そう願ったのに、
俺の足が動くことは無かった。
まるで、何かに引き留められ、抑えられたかのように。
その「何か」が何なのか、俺には分かっていた。
それは、俺の心そのものだった。
ここでみんなの元にいけば、
自分は今度こそ、死を迎えるだろうと、直感的に俺は感じていた。
だが、ここでみんなと一緒に
永遠の安らぎの刻を過ごせるのならば、
それでもいい、と、「死」を受け入れたはずだった。
だが、心の内にある、「死」を拒む想いが、俺の足を止めた。
「まだ生きていたい」という願いが、俺を許さなかった。
「生」への渇望は、死んでいなかったのだ。
安らぎの死を今すぐに迎える事が出来るとわかっていても、
それでも「生」を強く望む意志が、まだ俺には残っていたのだ。
その意志は、俺を必死に「死」へと向かわせまいと、
この意識の世界で、俺を必死に引き留めようとする。
気が付けば、頬を温いものが伝っていた。
意識の世界で、とはいえ、
長い間、流した事のなかった涙が、とめどなく流れた。
様々な想いを、感情を含んだそれは、決して止まることなく、
やがて、この意識の世界から、
自分自身がおぼろげになり、遂に消えていくのを感じた――。





「ぅ…ぅ…」
自分があの意識の世界から消えていくのを感じ取って、
次の瞬間、目の前の風景が変わった。
同時に、身体が急激に重くなったのを感じ取る。
「見開いた目」も、見開くことの重さを感じる程に。
目に映ったのは、見知らぬ、天井。
(ここは…)
自分が今、どのような状態で、どこに居るのか確かめようと、
身体を動かそうとしたが、身体は非常に重く、
思うように動かせなかった。
俺の身体は、仰向けに寝かせられていた。
身体の上に、何かを覆いかけられている事も感じ取った。
どうやら、ベッドに寝かせられているようだ。
(まさか…俺…生きて…)
意識の世界とは全く異なる、身体の重さ。
この重さは、生きている時に感じた事があったものと同じ。
重い頭を少し動かして、視界を移動させる。
すると、俺が寝かせられているベッドのすぐ傍に
椅子に腰かける二人の男の姿が見えた。
眼鏡をかけた、理知的な雰囲気を漂わせる男性と、
どことなくやんちゃな少年らしい快活な雰囲気を纏った、
人の良さそうな雰囲気も漂わせる、若い男性だった。
彼らは、じっと俺の方を見ている様子だった。
その表情には、
驚きと安堵の感情がこもっているようにも感じられた。
「…ぁ…あなた…ちは…」
声を出そうとするも、思うようにそれが出ない。
それでも、何とか絞り出すように、声を発した。
「気が付かれましたか。」
眼鏡をかけた男の声。
「…ここは…?…あなた…たち…は?…俺は…いったい…」
「ここはパラポルト出の帆船、コンキスタ号の病室です。
 私はこの船の船医、ウズキと申します。
こちらはハーシバル君。博物学者の卵です。
彼もこの船の乗組員です。」
「ハーシバルだ。
 あんたは三日前に海上を漂っているところを救助されたんだ。
 今まで、ずっと眠っていたんだ。
目が覚めて、本当に安心したよ。」
「ご安心を。命に別状はありません。
お怪我も時間と適切な治療で、後遺症無く完治できますよ。」
彼らは丁寧に、俺の質問に答えた。
(…生きているのか…)
命に別状はない、と、ウズキと名乗る男性は言った。
それはつまり、俺が「生きている」という事を、
はっきりと意味するものだった。
それに、「パラポルト」と言った。
アナトスマンよりも西にある国に所在する港町の事だと、
俺は知っていた。
勿論、行ったことは無いが。
「そう…でしたか…。助けていただき…本当に、あり…うぅっ…」
腕に痛みが走り、口から呻き声が漏れた。
「ああ、まだ無理に身体を動かしてはいけません。
 怪我も浅くは無い。まだ完治までには時間を要するのですから。」
見れば、両手に包帯が巻かれていた。
同じ感触を、身体の各所に感じた。
身体のいたるところにも巻かれているようだ。
「今は、ゆっくり休んでいてください。
 また、今より元気になりましたら、お話を聞かせてください。」
「安静にしていてくれ。まずは…元気になるのが先だ。」
「はい…ありがとう…ございます…。」
彼らの厚意に、ただ、感謝の言葉を告げた。
「…そうだ。お名前を伺っても、よろしいですか?」
「…スウォン・イェルネフェルト…です…。」


海の藻屑と消えるはずだった俺は、こうして、生き残った。


(生き残ってしまった…)
夜の病室で、天井を見上げながら、ぽつりと呟いた。
不思議な気分だが、
少しずつ、はっきりと「生きている」実感が湧いてくる。
この船の方達のおかげで、俺は九死に一生を得たのだ。
第一に心を占める感情は、彼らへの感謝の念だった。
だが、自身の「これから」への不安も、同時に湧く。
息を吹き返しての最初の夜、
様々な思考が巡りながらも、再び眠りに落ちた。
その日の眠りの中で、「夢」を見る事は無かった。


翌日。
前日に比べて、俺の身体は疲労や痛みが多少回復し、
声も無理に絞り出さずとも、出せるようになっていた。
話も満足にできるようになっていた。
「キャプテンが、あなたと話をしたがっている。」
その日の夕刻、
俺が寝かせられている船室に戻ってきたウズキさんは、
俺にそう伝えた。
キャプテン。つまりこの船の船長だ。
まだ、会った事のない人だった。
「俺も、会って話がしたいです。」
そう、俺の方からウズキさんに、「キャプテン」宛に伝えた。
「今からでも、お話できますか?」と問われて、
二つ返事で応える。
その旨を伝えると、ウズキさんは再び部屋を後にした。
やがて、彼は病室に戻ってきた。
ハーシバルさんと、船長らしき男性と、
もう一人の仲間らしき男性を伴って。
船長らしきその男性は、
まだ俺と殆ど歳の変わらないと見える、若い男だった。
その目には、強い覇気の光が宿っているのが見えた。
もう一人の男性も、船長らしき彼やハーシバルさんと同じく、
俺とさほど年齢の変わらなさそうな人だった。
頭にバンダナを巻いた、快活そうな男性だった。
「具合は、どうですか。」
「ええ、昨日よりも、またよくなりました…。
 助けていただきまして、本当にありがとうございます…。」
礼を言い頭を下げた俺に対し、彼は笑顔で首を振った。
「いえいえ、そんな…。
 お礼なら、
ウズキさんとハーシバルに言ってもらえませんか?
 夜の海を漂流しているあなたを
最初に見つけたのはハーシバルで、
 懸命に治療してくれたのはウズキさんですから。」
そう言いながら、
船長はハーシバルさんとウズキさんに向けて目配せする。
「ハーシバルさん、ウズキさん、
改めまして、助けていただき、本当にありがとうございます…。」
「いいって事さ。人間、助け合いが大事だろ?」
「医者として、当然の事をしただけですよ。」
笑顔と共に、その声が返ってくる。あたたかい声だった。
「皆さんには、本当に感謝しています…。」
もう一度、深々と頭を下げた。
「…と、自己紹介がまだでしたね。
 冒険家のレオンです。この船の船長(キャプテン)です。」
「ボクはカンドリー。この船の砲手さ。」
船長とバンダナを巻いた男性は、改めてそう名乗った。
「スウォン・イェルネフェルトと申します。
 アナトスマン海軍の一等兵です…。」
次は、俺の名乗る番だった。
改めて自身の名を名乗ると共に、自身の身の上を明かす。
四人の表情は、どこか納得したようなものだった。

ゆっくりと、漂流に至る経緯を、
それに関する自分が覚えている事を、丁寧に彼らに話した。
ツンドランドとの戦争で戦地を転々としていた事。
海戦に向かう途中、乗艦を巨大な海獣の攻撃によって撃沈され、
気が付いた時には独り、海上を漂流していた事を。

「助ける事ができてよかった…。」
漂流の経緯を聞き終えたキャプテンは、
気の毒そうな表情を浮かべながらも、安堵の表情を見せた。
「…今、この船はパラポルトまで向かっているのですが、
 もし、都合が大丈夫でしたら、怪我が治るまで、
パラポルトで怪我の治療をされてはいかがですか?
入院などの手配は、俺がしますから。」
「え…?」
まさかの申し出に、俺は戸惑う。
「できる限り、そちらの都合に合わせますが…、
 もし、治療されていくのでしたら、心配はいりませんよ。
 あの街の人達は、困っている人を見過ごしたりはしませんから。
 アナトスマンに帰国する時も、できる限り協力はさせてもらいますよ。」
命を救ってくれたばかりか、
更に俺に対して、救いの手を差し伸べようというのか。
少し、頬が熱くなるのを感じた。
「…ありがとうございます…。
 でも…皆さんの迷惑になるわけには…。」
「いいんですよ。迷惑だなんて、とんでもない。」
「…すいません…。では、怪我が治るまで、留まります…。」
もう一度、俺は彼の差し伸べる救いの手に、手を伸ばす。
彼の厚意が、ただ嬉しかった。
忘れていた、「甘える」気持ちが、胸に蘇る。
「国に、故郷に、家族の元に元気に戻れるように、
全快するまで休んでいってください。」
瞬間、胸が痛んだ。
これほど親切にしてもらえているのに、
自分を助けてくれる人の言葉に含まれた、「故郷」と「家族」の二語。
それが、心に突き刺さった。
そして、
「故郷…家族…ですか…。」
声が、流れる。トーンの沈んだ声が。
その声が零れ落ちた瞬間。
その場の空気すらも沈みゆこうとしているのを、俺は感じた。
話を聞いている四人の表情に、変化が表れていた。
俺の声の変調に、感情の変化を、感じ取ったのか。
柔らかい表情は、失われていこうとしていた。
「…無いんです…もう、どちらも…」
声は、止まらなかった。

堰を切ったように、
胸の内を全て吐き出すように、俺は続けた。
故郷の事。故郷での家族や友人達の事。故郷での思い出。
父親達の出征と死。自身の出征。
軍隊での日々。戦友の事。戦争の事。戦友の死。
故郷の滅亡と、家族や友人達の死。
以来、生きる希望も無く「生きていた」事。
軍の反対勢力や民衆への弾圧。
アナトスマンの「負」の面の実情と、国家や軍への憤り。
絶望の日々の想い。
帰る故郷を失くした悲しみ。
心から望む、「帰りたい場所」が無いという想い。
こんなに長く話したのは、いつ以来の事だったろうか。
こんなに胸の内を全て吐き出すように話を続けたのは
いつ以来の事だろうか。
何故、全てを吐き出そうとしたのだろうか。
疑念を抱こうと思うこともなく、全てを吐き出した。
話しているうちに、頬が熱くなっていくのを感じた。
温いものが頬を伝うのも。
先程、キャプテン達の心遣いを受けて感じた感情とは、
全く異なったそれによって、だった。
こんなに感情を昂らせて喋った事も、
この数年間、ずっと忘れていた気がした。

全てを話し終えた後、それまでとは一変し、
俺は何も言えなくなり、黙り込んでしまった。
話を聞いていた四人も、暗く沈んだ表情で、黙り込んでいた。
せっかく命を救ってくれた恩人達に、
秘めていた感情を、想いをストレートにぶつけてしまった事に、
内心、申し訳ない気持ちになった。
だが、心を止める事は、できなかった。

「どう…するんだ…?」
沈黙を破ったのは、ハーシバルさんの声。
沈んだ感情を感じさせる、重い声。
「怪我が治ったら…それから…そうするつもりだ…?」
「…治ったら…国に帰って、軍に戻るだけです…。
ああは言いましたが…俺はアナトスマンの軍人…」
「…それでいいのかよ…!」
小さな声だが、確かな力を感じる。
彼はキッと力強い視線で、俺の顔を見据える。
「それがあんたの本心なのか…!?
 無理やり軍人にされて、無理やり戦争に駆り出されて、
 酷い弾圧までやらせられて…、身も心もボロボロになって…。
 それは全部、あんたのしたかった事なのか!?
 やめろよ、自分の心に嘘をつくのを…。」
「……」
静かな声から一変、彼の声に更に力が加わり、
それは一層、感情的な色を帯びる。
ただ彼は、感情を込めた力強い声で、俺に問いかけた。
彼の言葉に、俺は何も言い返せなかった。
今しがた、国家と軍へと憤りを口にし、
「帰りたいと心から願う場所が無い」と本心を晒しておきながら、
嘘でそれを見過ごそうとした自分。
その事実を突きつけられて、自身の愚かさを悔やむ。
「正直に…なってくれ…。」
ハーシバルさんの声が再び静かなものに変化する。
しかし、彼の視線は、俺を捉えて離さなかった。
「…結論をすぐに出してほしい、とは思っていません…。
 ですが、怪我が治ったらどうするか、
 スウォンさんが心に決めたら、また教えてもらえませんか?
 …スウォンさんが思った、正直な気持ちを。
 できる事なら、俺も協力します。」
続いてそう告げたのは、レオンさん。
彼も静かにであるが、ある意志を込めて、そう告げる。
「…俺は…」
彼らの言葉は、本当に救いだった。
生きる意思を、喜びを、夢を失い、自分を偽ってまで生きてきた自分。
彼らの言葉は、後押ししてくれた。
愚かしい自分と決別し、今度こそ本当に、前へと進む為に。
「…俺はもう…軍に戻りたくありません…。」
やっと、口に出た。
あの時から、ずっと抱いていた本音。
それが口に出た瞬間。何かが決壊するのを感じた。

「アナトスマンの軍人としてのスウォン・イェルネフェルト」は、
この瞬間、死んだ。

「なぁ…もし、よかったら、俺達と一緒に来ないか?」
「そうだよ!ボク達と一緒に世界を廻ろうよ!」
「俺が…あなた達と…」
ハーシバルさんとカンドリーさんの言葉に、俺は戸惑う。
アナトスマン軍と決別するのを決意した俺だったが、
これからの展望は、まだ決まっていない。
そんな俺に対しての、彼らの提案。
それは、俺をこの船のクルーに、彼らの仲間に誘うものだった。
いきなりの事なので、戸惑ったのだが、
その瞬間、心に何か輝かしい気持ちが湧き起こった事を、
俺は忘れていない。
それもまた、過去に確かに抱いていた、ある想いだった。





その後、俺はパラポルトの街にて下船する事になり、
街の病院にて入院する事になった。
レオンさんは俺のこの街での入院などの手配をしてくれた後、
すぐに仲間達と共にパラポルトの街を後にした。

出航する前、レオンさんは俺に告げた。
二ヶ月ほど後に、再びパラポルトの街に戻る事。
その時に、これからどうするかもし決まっていたら、
教えてほしい、と。
パラポルトでこれから暮らすのも悪くない、とも告げられた。
パラポルトの住人になるのならば、
きっと街の人達も歓迎してくれる、と。
そして、もしコンキスタ号のクルーになるのならば、
クルー一同みんな歓迎する、と。


パラポルトの街での療養生活の中で、
街の人達の手厚い看護のおかげで、
徐々に俺の身体は回復し、
一ヶ月ほどして、俺の身体はすっかり元気になった。
回復してから、俺は自主的に、
街の人達の仕事の手伝いをするようになった。
働きたいという気持ちもあると同時に、
世話になった街の人達にも恩返しをしたかったから、でもあった。
パラポルトの街の人達は本当に親切で、優しく、
たくさんの人達と親しくなる事が出来た。
この街で暮らし、街の人達と接する日々を過ごす中で、
かつて失った生きる喜びが、心に蘇りつつあった。
過ごした期間は短いが、俺はすぐにこの街の事が好きになった。
これからずっとこの街で暮らしていくのもいい、とも思った。
だが、街の人達と接する中で、
それとは別の「ある想い」も日に日に強くなり…
やがて、この街に来てから、二ヶ月が過ぎ去ろうとしていた。





「じゃあ、今日はこれで失礼します。お疲れ様でした。」
「お疲れ様。今日もありがとう!」
今日も一日の仕事が終わり、俺は仕事場を後にした。
仕事を終えた俺は、ある場所へと向かう。
それは、この街に来てから、元気になってからできた、
この街での日課だった。

「こんにちは、スウォンさん。」
「こんにちは、ラピスさん。」
「もう今日はお仕事終わったんですか?」
「ええ。つい先ほど、終わりました。」
「今日も一日、お疲れ様です。」
仕事を終えて、ある場所へと向かう途中、
一人の女性に呼び止められる。
美しい水色髪の、可憐な女性。
名を、ラピスという。
彼女も、この街で俺が世話になった女性の一人だ。
彼女は看護婦の仕事をしていて、
入院中の俺を、とても親切に看護してくれた人の一人である。
加えて、料理も栄養も良く、とても美味で、
俺がこれほど早く元気になれたのも、
彼女の手厚い看護がその一因である事は間違いないと思う。
「いつものように、あそこまでお散歩ですか?」
「ええ。すっかり、いつもになりましたよ。」
「スウォンさんがこの街に来てから、もう二ヶ月、ですか…。」
「そうですね。二ヶ月なんて短いのに…
 なんだか、
もっと長い時間をこの街で過ごしたように感じますよ…。」
「…スウォンさんは、この街の事、好きですか…?」
「…勿論。好きになりましたよ。とっても…。」
「そうですか…よかった…。
 …もしこの街を出ていく事になったとしても、
この街の事、忘れないでくださいね。」
「えっ…」
一瞬、彼女が少し寂しそうな表情を浮かべたように見えた。
だがそれに気付いた次の瞬間、
彼女の表情は優しい笑顔に戻っていた。
「じゃあ、私また病院に戻りますので。今日はこれで…。
 お身体にはお気をつけてくださいね。」
「はい。ラピスさんにも助けてもらったこの身体、
大事にさせてもらいますよ。」
「ふふふ、ありがとうございます。では、また。」
「お疲れ様です。じゃあ、また。」
笑顔で会釈し、彼女と別れた。

「この街を離れても、か…」
一瞬寂しい表情を見せたラピスさんと、彼女の言葉を思い返す。
思い返さずにはいられなかった。


辿り着いたのは、海とは正反対の方向に所在する、丘の上。
そこは、街を一望できる、とても見晴らしのいい場所だった。
「今日も綺麗だ…。」
丘の上に腰を降ろし、一人、そこからの眺めを見つめる。
見下ろせる風景は、まさに絶景。
パラポルトの港町を一望できるそこからは、
街も、港も、海も、その美しい風景が見渡せる。
そして、今の時間帯は太陽が水平線の向こうに傾き、
やがては消えて行こうとする頃合。
夕焼けに染まった港町の風景は、心に染みる情景だった。
思い起こされる感情は、郷愁のそれにも似ていた。
まだ、故郷の村が健在だった頃。
そこで平和に暮らしていた頃。
当たり前の日常の中で、美しい故郷の風景に、
確かに覚えていた感動。
今、目の前に広がる光景は、
かつて抱いていたその感情を再び呼び起こさせる、
心惹かれるものだった。
この風景を見つけて以来、
毎日のように、一度はこの場所に足を運んでいる。
それが、俺のこの街でできた日課。

「…本当に、素敵な街だ…。」
「嬉しいですね。そう言ってもらえて。」
「…ぁ…」
背後に声がして、振り返ると、
そこにはこちらに歩み寄る一人の男性の姿が。
風景にすっかり気を取られ、気配に気付かなかった。
そこに居たのは、俺をこの街へと導いた人。
「こんにちは。」
「こんにちは。すっかり元気になったみたいですね。」
「ええ、おかげ様で。街の人達にも、本当にお世話になりました。」
「みんないい人達でしょう?俺も子供の頃から、
この街の人達には、本当にお世話になっていますよ…。」
レオンさんは、俺の隣に腰掛けた。
「今日、戻ってきたのですか?」
「ええ。まだ到着してそんなに時間は経っていませんけどね。
 着いたのは、スウォンさんが港の仕事を終えた後ですから。」
「…どうしてここが…」
「さっき街中であなたの姿を見かけましてね。
 追いかけようとしたらちょっと人に捕まりまして、
追いつくのが遅れちゃったんですよ。」
「他の皆さん方は?」
「みんなそれぞれ自分の用事です。」
「そうでしたか…。」
一度、街の風景を一瞥した後、言葉を続けた。
「レオンさん達にも、この街の人達にも、
本当に、感謝してもしきれないです…。
助けられてばかりです…。」
「…まだ少しですけど、街の人達から、あなたの話を聞きましたよ。
 仕事、頑張っていたそうじゃないですか。
 みんなあなたの事を褒めていましたよ。」
「そんな…助けられているのは、俺の方なのに…。」
そう答えながらも、
自分が街の人達に受け入れられている事が改めて認識できて、
内心とても嬉しかった。

「…一つ、お聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「何でしょう?」
「レオンさんの夢について、教えてもらえませんか?」
そう問いかけると、レオンさんは一呼吸置いた後、
遠くを見据えて、言葉を続けた。
その目は、遥か彼方へと向けられているようだった。
「…カリムーの宝を見つける事です。」
「カリムーの宝…!?」
カリムー。
その名は俺も知っていた。
今から100年以上前に世界一周の航海に出た船乗り。
そして、『カリムーの宝』とは、
彼が世界一周の航海の途上に、世界のどこかで発見したとされる、
「全ての船乗りの願いを叶えるもの」「終わりを齎すもの」
と言い伝えられる宝物。
俺も小さい頃から、祖父にカリムーの言い伝えを聞かされていた。
今でも、世界中の冒険家達が追い求めている、伝説の存在である宝。
レオンさんもまた、伝説に挑もうとする一人だったのか。
「冒険の夢や目的はそれだけではないのですが、
 最大の夢は、カリムーの宝を見つける事です。
 …見つけなくちゃならないんです…!」
そう語るレオンさんの瞳の奥に宿る強い意志の宿った眼光。
そこからは、強い「使命感」のようなものも感じられた。
それは、俺の胸の内のある想いを響かせる。

「レオンさん。俺は夢を失くしていました…。
 生きる喜びすらも、忘れていました。
 …でも、あなた達に助けられて、
 この街で過ごして、それを思い出すことができました。」
自分から告げる。今の俺の胸の内を。
「俺にはまだ夢はありません。
 だから、俺は…夢を探したい。
 この街も、この街の人達も好きです。
 ここで暮らしていくのも、悪くないと思いました。
 ここで暮らしていても、必ず幸せを見つける事が出来ると思います。
 だけど、まだ未来の選択肢はここ以外にもあるかもしれない。
 俺は、もっと世界を廻って、新しい夢を見つけたい。」
「スウォンさん…。」

「俺を…連れて行ってくれませんか。」

それが、俺の出した「答え」。偽らざる、本音。

「いいんですか…?」
「これが、俺の答えです。」

それが、新たに見出した、俺の生きる道だから。

やがて、レオンさんは笑みを浮かべると、
俺にそっと右手を差し出した。

「歓迎しますよ。スウォンさん。
 ようこそ、コンキスタ号へ。」
「これからも、よろしくお願いします。」

差し出された手を、笑顔で強く握り返す。


その日、俺はコンキスタ号のクルーの一員になった。



つづく




※補足説明
SS本編中ちょっとだけ登場したラピスというキャラですが、
彼女のキャラクターは13裏でも
レンの友人として存在が示唆されている瑠璃花です。
彼女はこの時点でレオン(13裏主)達コンキスタ号のクルーと
面識があるという設定です。
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Secret

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プロフィール

無頼

Author:無頼
ようこそ。
どうぞ、ごゆるりと。

↓管理人の特に好きなパワポケCP
6主×瞳さん
羽柴君×夏海さん
10主×紫杏

6主×瞳さんスキーな同志、
随時求みます。

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