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Wish of Eternity 第0話~sideS

13裏ifもの連載SS第0話。
今回はスウォンさんの回想中心です。

では、以下より本文になります。



今夜も綺麗な星空だ。
目の前に映る光景を見てそう思うと同時に、
今でも「そう思う」事の出来る自分に呆れる。
どうして、今になってもそんな事を思えるのだろう。
力なく視線を落とす。
祖国の文字が刻まれた木片。
力なく、それでも残った限りの力で必死にそれを掴む、
自分自身の腕。
木片と、それを掴む腕。
それが文字通り、命を繋ぎ止めている。
その繋いだ命が、いつまで持ち堪えられるのか。
薄々、勘付いていた。
もう、長くないだろう、と。

命に恵みをもたらす、母なる海。
その「母なる海」は、今はこの俺に「恵み」ではなく、
「死」をもたらそうとしている。

徐々に失われていく体温。すり減らされる力。
それは確かに、俺と「死」の距離を縮めていく。
「死」は、もう目前だった。
力なく、目が閉じられる。
視界が暗闇になると同時に、ある光景が浮かび上がる。
もう、幾度となく繰り返し再生された光景。
それは、呼び覚まされる過去の記憶。


――多民族帝国『アナトスマン』の軍人である
青年、スウォン・イェネフェルト。
大海原に一人の彼の命は、風前の灯火だった。――



『Wish of Eternity
 第0話~sideS 彷徨、絶望の果てに…』



多民族帝国である大国『アナトスマン』。
その帝国の領内の、
海に面したとある小さな村に、俺は生まれた。
家族は、両親と祖父、それに少し歳の離れた弟と妹。
六人での生活。
故郷の村は、漁業と農業を生業としていた。
村での暮らしは、決して豊かと言えるものではなかった。
「貧しい」と言われても、仕方なかったかもしれない。
だが、俺は村での暮らしを一度も不便と思った事は無かった。
そこでの暮らしは、幸せだった。
家族は、そして村の人達は、みんな温かく、優しかった。
お互いを慈しみ合い、助け合う。
村の人々の心には、確かな優しさと温かさが根付いていた。
そこで過ごした日々は、ただゆっくりと過ぎて行った。
楽しい事ばかりではなく、大変な事や、辛い事も、哀しい事も、
勿論いくつもあった。
だが、それでも俺は今でもはっきりと言える。
家族や、村の人々達と一緒に過ごした故郷での日々は、
とても楽しく、幸せだったと。
大好きだった。家族の事も、村の人達の事も。
そして、故郷の事も。
静かで、穏やかで、あたたかな日々。幸せな日々。
その日々が、何よりもの幸せ。
この日々が、いつまでも続けばいい。
それが、常に胸に抱いていた願いだった。


だが、その「願い」が永久に続く事は無かった。
帝国による強制徴募。
来る他国との戦争に備えて、
俺の村からも既定の年齢に該当する男達が徴兵される事になったのだ。
徴兵された人々の中には、俺の父親も含まれていた。
俺の父も含めて、徴兵された誰もが戦争に行く事を嫌がった。
誰もが、故郷に家族を残して戦争になど行きたくなかった。
残される家族も、家族を置いていかねばならなくなった男達も、
誰もが残酷な現実を悲しんだ。
それでも、徴兵令に背く事は出来なかった。
「必ず帰ってくる。」
そう言い残して、徴兵された村の男達は、故郷を後にした。
俺の父親も…。
父達の後ろ姿が見えなくなるまで、
俺も、残された「家族」達も、みんなその後ろ姿を見送っていた。
悲しみの涙を、ある人は流し、ある人は堪えながら…。
俺は、堪える事が出来ない側だった…。
それは、まだ、俺が11歳になったばかりの頃の話…。

父親達は、誰一人として帰ってくる事は無かった。
届いたのは、全員が出生地で戦死したという報だけ。
失意と絶望、そして悲しみが、村全体を支配した…。
その報が届いた日、
俺は父達が村を去ったあの日以来に、涙を流した。
あの日以上の量の涙を…。

いつまでも悲しんでばかりはいられなかった。
家族を養っていく為に、村の為にも、
俺が頑張らなければならなかった。
それまで以上に、俺はより一層、
村での仕事を頑張るようになり、
残された村の人達も悲しみから立ち直ろうと、
前を向いて「歩き」始めた。

それからしばらくした後、「その時」がやって来た。
再度の強制徴募。
元々若い男性の少なかった村で、
先年の徴兵によって多くの若い男性を失った村で
徴兵の条件に該当していたのは、俺一人だけだった。
ただ一人、村を後にしなくてはならない。
かつての父達のように、
俺が出征しなければならなくなったのだ。
悲しみから立ち直りかけた村に、再び訪れた残酷な現実。
戦争になど、行きたくなかった。
国の為にとはいえ、人殺しなどしたくなかった。
家族と、村の人達と…故郷の村を、離れたくなかった。
だが、かつての父達がそうだったように、
俺にも拒否の選択は許されていなかった。
今度は俺が覚悟を決める番だった…。

別れの日。
母も祖父も、村の大人達も、
少しでも俺に心配をかけまいと、気丈に送り出そうと努めていた。
けれでも、胸の内にある悲しみを、誰もが隠し切れないでいた。
弟や妹は、同年代の女性の友人や年下の子供達は、みんな泣いていた。
別れを悲しむ家族や村の人達の姿を前に、
あまりにも大きな悲しさの念に、涙が込み上げたが、
俺の方こそ、家族に、村の人達に心配をかけまいと、
彼らの前で涙を見せる事は無かった。
俺は約束した。
必ず生きて帰ってくる、と。
あの時の、父達と同じ約束を…。
親しき人達の姿を目に焼き付けて、俺は故郷の村を後にした。
家族や村の人達の姿が見えなくなって、初めて俺は涙を流した…。

それが、家族や村の人達との、生涯最後の別れだった――。


徴兵され、最低限の訓練を積まされた後、
すぐに俺は戦場の最前線へと送られた。
敵は北の大国・ツンドランドの軍。
誰もが必死に生きようとあがく戦場で、俺も必死にあがいていた。
絶対に生き延びて、家族達の待つ故郷の村へと帰るんだ――。
そして、村で皆と一緒に平和に暮らすんだ――。
それだけの一念を胸に、俺は必死に戦場を生き抜いた。
戦いの日々が続くうちに、
徐々に俺の身体と心は、戦場に「慣れ」ていった。
戦場での「殺し合い」にも、適応していった。
変質していく自分自身に、俺は恐怖した。

戦争の日々は、それまで体感した事のないほどの
辛く、悲しく、恐怖する出来事の連続だった。
いつ死ぬかわからない、
敵兵と殺し合わなければならないという日々の連続は、
確実に肉体にだけでなく、
心にも、精神にも、ダメージを蓄積していった。

ただ、辛い事ばかりではなかった。
戦いの日々の中で、大切な戦友を得る事もできたからだ。
戦友と知り合えた事がきっかけとなって、
それまで「知らなかった事」をいくつも知り、
新しい楽しみを見つける事も出来た。
それに何より、
戦いのない時に戦友と過ごす時間は、心の大きな救いとなった。
新しく得た親しい人と、穏やかな時間を過ごせるだけでも、
それはとても嬉しい時間だった。

やがて、戦争が終わった。
故郷を出てから、二年後の事だった。
だが、俺が得た「戦友」は、終戦の時を迎える事は無かった。
終戦を迎える一週間ほど前の戦闘にて、
彼は戦場にその命を散らした。
俺の、目の前で…。
その時は、俺にとって、
親しい人間が目の前で命を落とした瞬間を
初めて見届けた時だった。
涙せずにはいられなかった。
彼と一緒に、終戦の時を迎えたかった…。
彼と一緒に、平和な日々へと還りたかった…。
終戦を迎えたその瞬間、喜びの感情よりも、
悲しみのそれの方が遥かに込み上げてきた。
戦友の死を、俺は改めて悲しむ事になった…。

そして、更なる絶望が、俺に告げられる時が来る――。

終戦後、帰郷の準備を進めていた俺に、
軍関係者の人間が、
告げなくてはならない事がある、と俺を訪ねてきた。
曇ったその表情に、嫌な予感が脳裏をよぎった。
聞くのが、怖かった。
恐る恐る、俺はその者に尋ねた。
彼は、重い口どりで、静かに告げた。

「あなたの故郷の村が、滅びました。」と――。

戦時中、戦争の混乱に乗じて
いくつもの強盗団が帝国領内の各地で暴れたという。
その中の一団が、俺の故郷の村を襲撃したというのだ。
その強盗団は軍の部隊に全員捕縛され、処刑されたが、
襲撃された村には、一人として生存者は無く、
村人全員の遺体が確認された。

それが、告げられた「事実」だった。

信じたられなかった。信じたくなかった。
だが、その「事実」を告げられても帰郷した俺が目にしたもの。
それは、全てが滅びた故郷だった。
ずっと暮らしてきた村は廃墟と化し、
愛していた家族の、村人の姿は、そこには無かった。
平和で幸せだった故郷は、そこでの日々は、
永久に失われ、消えてしまった――。

全てが音を立てて崩れ落ちた――。

その日、永久に失われた「故郷」で、
俺は涙が枯れ果てるまで、泣いた。
以来、俺は涙を流す事は無くなった――。

愛しい人を、親しい人を、
帰る場所を、全て失った――。
そして、生きる望みも、願いも、失った――。


全てを失った俺は、どこに行く事もできなくなった。
軍に残り、軍人として生きる以外に道は無かった。
以来、俺は淡々と、
ただ軍務をこなしていくだけの日々を送るようになった。
そこには、生きる喜びも、望みも、願いも何もない、
他者とコミュニケーションをとろうともしない、
空虚な日々の連続。
生きながらにして、俺は「死んでいた」。
いつ死んでもいいと、そう思っていた――。
死にたい、とすら「願った」――。

やがて、帝国領内に再び不穏な空気が流れ始めた。
帝国の北方の地域で、
大規模な反対運動が勃発するようになったのだ。
武力を用いた蜂起などではなく、
あくまでもデモ運動を中心としたものだった。
それに対し、帝国政府は武力による弾圧を軍に通達し、
多くの軍人達が反対運動の弾圧に駆り出された。
弾圧は、虐殺に等しい、あまりにも非道なものだった。
武器を持たない一般市民に対しても、
容赦なく引き金を引かれ、多くの国民の血が流された。
弾圧は運動の当事者達だけでなく、
全く関係のない罪のない人間にまで及ぶこともあった。
俺は一度として、彼らに銃を向ける事が出来なかった。
周囲の軍人にはそんな俺を嘲る者も少なくなかったが、
彼らの視線や評価など、俺にはどうでもいいものだ。
一方的な武力弾圧で反対運動を潰し、
尚且つ罪のない一般人すら虐殺する帝国のやり方に、
はっきりと俺の心中で国家への不信感が芽生えていた。
罪のない人々の幸せを理不尽に奪うような
あまりにも非道な弾圧を認める事など、
できるはずがなかった。
いつ死んでもいいと思ってはいたが、
罪のない人の幸せを奪い、殺すような事などできなかった。
だが、同時に、虚しく、悲しい気持ちに襲われる。
俺は、何の為に生きているのだろう――と。
国家への不信が芽生えても、
未だに生きる望みも、願いも、目的も
新たに見つけ出せないままに生きている自分自身が、
ただ、情けなかった…。

やがて、広がる反帝国運動に呼応・介入する形で、
再びツンドランドが帝国への侵攻を開始。
これに対してグレートクインとフランダが帝国に加勢し、
再び戦争が勃発した。
常に死を覚悟し、いつ死を迎えてもいいと思っていたのに、
俺はしぶとく生き残り続けた。
その「悪運」も、尽きる時が訪れようとしていた。
あまりにも呆気ない時だった。
ツンドランド海軍の艦隊と交戦すべく、
帝国海軍の一艦隊が出航。
その艦隊を構成する艦の一隻に、俺は搭乗していた。
敵艦隊との交戦を前に、俺の乗っていた艦は沈められた。
沈めたのは敵の艦隊ではない。
自然の産物だった。
突如として艦隊の前に姿を現した、一体の巨大な海獣。
一角を携えた、巨大な純白のシーサーペントだった。
姿を現すや否や、海獣は艦隊を強襲した。
まるで海を無駄に血塗る人間に憎悪をぶつけるかのように、
奴は艦隊を蹂躙した。
大自然の生み出した驚異の前に、人間はあまりにも無力だった。
瞬く間にいくつもの艦船が沈められ、
あっという間に俺の乗船していた艦船も粉砕され、
俺は海へと投げ出され、そのまま気を失った――。


気が付くと、俺はただ一人で、
艦船の破片と思しき木片にしがみつきながら、
海上を漂流していた。
自分がどれだけ気を失っていたのかは、わからない。
だが、目が覚めたその時には、
周囲には人の姿は見られなかった。
艦隊の乗員がどうなったのか、
あの巨大な海獣がどうなったのかもわからない。
確かに言えた事は、俺自身はただ独りで漂流している事。
それだけだった。
太陽に肌を焼かれ、海水に体温を奪われながらも、
それでも奇跡的に、俺は生き残り続けた。
鮫や凶暴な海獣に襲われることが無かったのも、
嵐に見舞われることが無かったのも、
不幸中の幸いだった。
しかし、このままでは死に向かったままなのも事実で、
その状態のまま、数日もの間、俺は海上を彷徨っていた。

―何故、「奇跡」や「不幸中の幸い」と思うのだろう。
いつ死んだっていいと思っていたのに――。
死にたいとも望んだこともあったのに――。





再び訪れた過去の記憶の光景が途切れると、
俺は再び目を見開き、
力なく――それでも残された力を振り絞って――天を仰ぐと、
黙って夜空を見上げた。
天には依然として、数多の綺羅星と月が輝いて見えた。
(もうそろそろ、か…)
視界が落ち、再び命綱たる木片へと身体が倒れる。
やがて、ゆっくりと目が閉じられようとする。
――もう、開かれる事は無いだろう―。
不思議と怖くは無かった。
いつ死んでもいいと、そう思っていた。
死にたいと、そう願った事もあった。
その「死」が、いよいよ訪れようというのだ。
短い生涯。
辛い事や悲しい事もたくさんあったけど、
あの村に生まれる事が出来て、
家族や村の人達、戦友にも出会えて、それはとても幸せだった。
――死ねば、苦しみから解放されるのだろうか。
――死後の世界で、先に逝った家族や村の人達、
戦友とも再会できるのかもしれない。
そう思うと、楽な気持ちにもなれた。
静かな波の音だけが、耳に響く。
波に包まれて眠る最期も、悪くないのかもしれない――。
亡き戦友の言葉を思い出しながら、静かに目が閉じられていく。
(みんな…俺も…すぐにそっちへ…)
安らかに死の眠りにつこうと、目を閉じたが――、
同時に、死の直前だというのに、
俺は自身の未練がましさに改めて気付き、呆れる。
まだ、生きていたい。
まだ俺は、何も成し遂げていない。
安らかに逝こうとしているのに、どうしてそう思うのだろう。
だが、その想いを否定する事はできなかった。
漂流している時点で、死のうと思えばいつでも死ねたはず。
なのに、死のうとしなかった――。
いつ死んでもいい、死にたいと思い、願っていたというのに、
今になって、「生きたい」という想いが
願いとなって浮かんできて――。
今までの想いと正反対だというのに――。
情けない話だ――。
そのまま、俺の意識は深淵の闇へと堕ちていく――。


死にゆく運命にある俺に向かって、一隻の船が接近している事に、
俺はその時、まだ気付いていなかった――。



つづく
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Secret

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プロフィール

無頼

Author:無頼
ようこそ。
どうぞ、ごゆるりと。

↓管理人の特に好きなパワポケCP
6主×瞳さん
羽柴君×夏海さん
10主×紫杏

6主×瞳さんスキーな同志、
随時求みます。

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